2021-05-06 17:30 追加
ぬのTのバレーボール技術論 動作から見た「ブロックシステム構築」への道 3「スイングブロック」
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腕を振った方がネット上に早く手が出る
海外の論文ですが「ランニングステップで、ネットに平行に移動してブロックに跳ぶ場合、スイングブロックの方が手を肩の前に構えておく『伝統的なブロック』に比べて、より早くネット上に手が出、より高くジャンプすることができ、より相手コート側に手が出る」ということが証明されています。
Comparison of the Traditional, Swing, and Chicken Wing Volleyball Blocking Techniques in NCAA Division I Female Athletes
動作の違いは写真で分かりますし、結果は3ページ目の一番下にある小さな表を見れば分かるので、ぜひご覧ください。
論文の考察(Discussion)では、「『伝統的なブロック』が手の位置を高く構えたまま動くので早くネット上に手が出るという仮説があったが、実際には遅かった」ということが書かれており、「手を構えたまま動く」ことにはデメリットしかないと考えられます。
セイエド選手の連続写真でも、②や⑩の離陸直前に手は高い位置に来ているので、ジャンプで腕を振ることがネット上に手を出すのを遅らせることは考えられないですね。
この論文では触れられていませんが、さらに大きなメリットは「助走の勢いを使って空中で移動できる」ということです。
「空中移動」のメリット
腕の振りもネットに向かってやればタッチネットにつながりますが、ネットに平行な動きなので、どんなに大きく腕を振っても、いくら幅跳びをしてもタッチネットの原因にはなりません。むしろ「助走の勢いを使って空中移動」を最大限利用することによって、間に合わなかったブロックが間に合うようになります。
図は「重心移動」をイメージしたものですが、Aがスタート、Bが空中で最高点に達した状態で、Bの時にブロックヒットするものとします。Aから右に移動し、Cで踏み切る場合と、Bの真下近くのDで踏み切る場合を比べると、手前のCで踏み切った方が早くBに到着できます。C→BとD→Bはどちらも空中にいて、空気抵抗を無視すれば重力のみが働くので、重力に逆らって同じ高さに到達するために同じ時間がかかることになります。つまり、A→C→Bと移動する方がA→D→Bと移動するよりもC→Dの分丸々早く到達できるというわけです。
セイエド選手のこのブロックでは、左足の踏み切り位置からブロックにボールが当たった位置までの水平距離は約95cmと計算できるので、垂直に跳ぶよりも1m程遠くまで、同じ時間でブロックを完成させることができたということになります。もちろんこれは世界一極端な例ですが、「空中移動」を利用することはリードブロックをやろうとする全ての人のメリットになることは間違いありません。
以上がスイングブロックのメリットになりますが、デメリットはどうでしょうか?
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