2014-03-26 19:55 追加
世界のバレー会場から 第4回 ヨーロッパバレーに国境はない!?「ヨーロッパ選手権」観戦
海外バレー観戦コラムの第4回
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2013年9月、デンマークの首都コペンハーゲンで開催された男子バレー「ヨーロッパ選手権大会」ファイナルは、前代未聞の屋根付きサッカースタジアムを会場とし、北欧の冷たい空気で冷やされた場内は、ヨーロッパ各国から集まったファンの熱気で満たされていました。
観客席センターブロックにはロシア国旗を広げた集団、2階席にはセルビア国旗、ブルガリア国旗を掲げた団体がそれぞれ左右に。イタリアのフラッグを手にしたグループも至るところに見られます。デンマークと共同開催で第一ラウンドから1/4ファイナルまでが行われたポーランドの熱心なファンたちも、自国がファイナル進出を逃しても観客席センターブロックの前列を集団でキープ。それぞれが国旗やマフラー等応援グッズを手に、頬にはペイントを施し色彩豊かな場内。大会出場全16チームから勝ち上がってきたファイナル進出のイタリア、ブルガリア、セルビア、ロシアの応援はもちろん、海を越えたお隣ポーランドや自国デンマーク、ベラルーシにアイルランド、各国からバレーを楽しみに来たファンで満たされ、一体ここはどこの国なのか…と戸惑ってしまうほど、どこの国のファンもエネルギッシュな声援を送っていました。
そんな賑やかな会場で行われたセミファイナルとファイナル。高さだけでなくディグの巧さを感じたロシアが圧倒的な強さで、セミファイナルでセルビア、ファイナルでイタリアを撃破し、見事金メダル獲得。セルビア、イタリア両チームは、1セットこそロシアから奪いましたが、打って打ってもブロックに阻まれディグで拾われ最後は成すすべなく敗退しました。
3位決定戦に回った前回王者のセルビアは、ブルガリアをストレートで下し銅メダル。ミリュコビッチが代表を引退し2年前とは異なる新たなチーム編成で挑みましたが、セッターのヨボビッチ(21)、ミドルブロッカーのリシナツ(21)、オポジットのアタナシエビッチ(22)がそれぞれ、フェアプレー賞、ベストブロッカー賞、ベストスコアラー賞を受賞し、近い将来の活躍に期待が持てる結果を残しました。
また銀メダルに輝いたイタリアもオポジットに若手のベットーリ(22)を起用し、ザイツェフ(25)をウイングスパイカーへ移行。それぞれベストスパイカー賞、ベストサーバー賞を受賞し新たな形で結果を残しました。
MVPはムセルスキー(25)。ベストセッター賞、ベストリベロ賞はそれぞれ、グランキン(29)、ベルボフ(32)と、ロシア選手が受賞。五輪、ワールドリーグ2013と近年タイトルを総嘗めにしているロシアの勢いは、留まりそうにありませんでした。
ですがそんなロシアも第一ラウンド初戦ではドイツにストレートで敗れており、波乱の勝ち上がりだったのです。他のプールでも同様の事態が起こっており、大会序盤は全く推測のできない展開。各チーム、手抜きなしの通常のスターティングメンバーで挑んでの結果だっただけに、ヨーロッパチームのレベルの高さを感じました。プールAではベルギーがイタリアを破り、プールBではフランスがポーランドを破り1位通過、プールCではフィンランドがセルビアを抑え、プールDではロシア、ブルガリアに勝利したドイツが1位通過でクオーターファイナルへ進出。強豪といわれているチームがことごとく第一ラウンドで敗北を味わっていたのです。
ベルギー、オランダ、フィンランド、スロベニア、普段、国際試合の出場権を与えられずランキングの順位を上げられないチームも、実際に戦いを見てみるとランキング上位のチームに大きな力の差を感じませんでした。現にセルビアは一次ラウンド初戦、スロベニアに3-1で敗北。ベルギーともファイナルラウンドの切符を競り合い、決して安易に勝ち上がらせてはもらえませんでした。同じく一次ラウンド、ベルギーとの対戦でフルセット負けしたイタリアも、オランダ、フィンランドに第一セットを奪われ、苦しいスタートを強いられていました。バレーは流れのスポーツ、スロースターターのイタリアは試合開始直後に流れにのれないことが多く、序盤は常に相手ペース。ロシアやイタリア、ポーランドなど強豪国リーグで活躍する選手のいるオランダ、フィンランドチームは、波に乗っていると技術や精神力が決してイタリアに劣っているようにはみえませんでした。
今回戦いを見ることのできなかったスロバキア、チェコも、選手の半数以上が国を超えヨーロッパ各国のチームに所属しプレーしています。国々の境界なくヨーロッパ全体が選手を育て、ナショナルチームの力を高め合っているように感じたヨーロッパバレー、協力、競争できるこの環境こそ、ユーロ全体のレベルアップにつながっている気がしました。
国境を感じさせない状況は、選手のみならず観客にも通じていました。ファイナル進出4ヶ国以外にも、各国から駆けつけたサポーターが第一ラウンドから力強い応援で後押し。オレンジ色のTシャツを着たオランダ集団、青と白のグッズや帽子を身につけたフィンランド集団は、客席のひとエリアを埋め尽くすほど集結し、ラウンドを勝ち上がる選手を追って会場を移動していました。国境を超えて集まるその人数の多さにバレー愛の強さを感じるとともに、思い返すのはアジア選手権の記憶。2011年9月、イランの首都テヘランで行われたアジア選手権は、ビザの取得が困難だったこともあり国境を超え観戦に訪れる観客がほとんど見られず、イラン国民の独壇場。地域が違えばこんなにも雰囲気が違うものなのか、大会の位置づけは同じでも「バレー」という競技の楽しまれ方は、世界各国で全く異なっていることを知りました。
文責・写真:宮﨑治美
長崎県生まれ。2007年ワールドカップをきっかけにバレー観戦を始め、2009年頃から徐々に海外へも観戦に行くように。海外観戦数はヨーロッパを中心に4年間で計50試合以上。競技経験はないながらも、コートの中で繰り広げられるドラマ、選手の人間性に魅了され観戦し続けている。
第一回 ロシアリーグ
http://vbw.jp/5161/
第二回 イタリアセリエA1
http://vbw.jp/5267/
第三回 韓国Vリーグ「オールスターゲーム」
http://vbw.jp/5414/
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