2021-09-01 11:27 追加
益子直美さん主宰の「監督が怒ってはいけない大会」が一般社団法人に。「いつかは私が必要なくなるくらい当たり前のことにできれば」
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また、益子さんは今年6月から日本バレーボール協会(JVA)の理事にも就任した。「これまで組織に属して活動したことがなかったのですが、せっかくいただいたお話なので、私にできることは引き受けたいと思いました。3年後のパリ五輪だけでなく、その次のロサンゼルスや、さらにもっと先を見据えた育成を考え、指導者制度の見直しなどにも取り組めたらと考えています。中学校の時の監督に怒られたり、叩かれる指導を受けたことが現在の活動のきっかけになっていますが、恩師は技術指導には一生懸命で、将来を見越して基礎をしっかり教え込まれたことは感謝しています。バレーに対する情熱には尊敬しますが、表現の仕方や指導方法が昔のやり方だった。その情熱を、自己肯定感を養うような声掛けだったり、アバウトではなく科学的な指導に変えていくような学びやアップデートが指導者にも必要だと思います」
現在開催中の東京パラリンピックでは、シッティングバレー(座った姿勢で行う6人制バレー)の解説を務めている益子さん。シッティングバレーとの出会いは1990年代後半に遡る。「こういうバレーもあるんだ」と現役引退後に初めてシッティングバレーを知った益子さんは、練習に通い、選手たちと汗を流した。それが現在の東京パラリンピックにつながっている。
「バレーは6人制だけではなく、9人制やビーチバレーはもちろん、シッティングバレーやデフバレー、そして最近ではスノーバレーというのもあります。現在は別々に活動しているこれらのバレーの横のつながりが持てるようにできればということも考えています」と話す。実は、益子さんは「益子直美カップ」を始める2014年までの10年間、ゲイの選手たちで構成されたチーム同士の大会も主催している。こうしたトップカテゴリーとはまた違った、なかなか陽の当たらないバレーのサポートも続けてきた。
「7年間『監督が怒らない大会』の活動をしてきましたが、前例がなく、手探りの状態だったため、なかなか広めることができませんでした。そうしている間にもスポーツの現場でのパワハラや体罰の事件のニュースが流れてくる。のんびり進めている場合ではないなと思い、法人を立ち上げました。でも、この7年の間に少しずつ進歩はしています。幸い、バレーボール以外の競技からも『監督が怒らない大会』を開きたいというお話をいただくことが増えてきて、9月18日には大阪でバスケットボール大会を開催予定(コロナ禍のため、変更の可能性あり)です。もちろん、バレーボールも今後、開催地を増やしていく予定で、詳細が決定次第、ホームページに掲載していく予定です。大会を開催したいと考えている指導者や保護者の方は、ぜひホームページの問い合わせフォームから相談していただけたら」と益子さん。
「本腰を入れて取り組み、10年目くらいには形にしたいと考えています。いつか『益子直美はもういらないよ』というくらい当たり前のことにできれば」という。「例えば、『部活で水を飲んじゃいけない時代があったらしいね』というくらいに、『監督が怒って指導する時代があったらしいね』と昔話にできる時代が早く来てほしいですね」
【プロフィール】
益子直美(ますこなおみ)
1966年5月20日、東京都葛飾区生まれ。中学からバレーボールを始める。共栄学園高時代にバックアタックとジャンピング・ドライブサーブを武器に春高準優勝に輝き、同年、高校3年生で日本代表メンバー入り。
85年、イトーヨーカドー女子バレーボール部に入団。90年、齋藤真由美らと共に第23回日本リーグで念願の初優勝に貢献する。同時に日本代表でも活躍し、世界選手権(86年、90年)、ワールドカップ(89年)などにも出場する。
92年に現役引退後は、スポーツキャスター、タレントなどとしても活躍。
2021年4月、一般社団法人監督が怒ってはいけない大会を設立し、代表理事となる。同年6月、日本バレーボール協会理事に就任する。
監督が怒ってはいけない大会公式ホームページ(http://masukonaomicup.com/)
写真提供:一般社団法人監督が怒ってはいけない大会
取材・文:高井みわ
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