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コラム

2022-09-14 17:59 追加

河野裕輔のエール! 19稿 龍神ニッポンの2022年締めくくり 世界選手権を終えて

河野裕輔コラム

全日本代表 男子

元日本代表でJTサンダーズ広島で活躍した河野裕輔さんによる男子バレーコラムです。今回は9月5日に東京五輪王者フランスと対戦し、フルセットの惜敗で終わった世界選手権について。

皆様こんにちは。河野です。今回は国際シーズン2022年の締めくくりである世界選手権を終えた龍神ニッポンを振り返ってみたい。
惜しくもベスト16でオリンピックチャンピオンのフランスに対しセットカウント2-3で敗れた龍神だが、私はこれを「大健闘」とは言いたくない。あえて「惜敗」であり「勝利の可能性が今までで一番高かったゲーム」であるという見方をしたい。理由は大きく3つである。

◆サイドアウトで負けていなかったこと
これはだいぶ昔からこの紙面でも言い続けているが、バレーボールはサイドアウトを取り続けている限り「絶対に負けない」スポーツだ。以前はサーブで崩されハイセットをブロック、あるいはディグからの切り返しで失点しズルズルと点差が開くことをよく目にしていたが、この試合に関してはOP西田を中心に、高確率で連続失点を防ぐことができていた。

◆ブレイク局面でも十分に戦えていたこと
龍神のサーブから始まる局面においては相手の攻撃を防ぐことからラリーが始まる。そのため「いかに相手に有利な状況を作らせないか」が重要になるが、VNLと比較してもサーブで攻め続けられたこと、しつこくブロックについていけたことから、ラリーに持ち込みブレイクをとる機会が増えていたように思う。序盤はうまくリズムが作れておらずチームのリズムが合わない場面も散見されたが、2セット目以降は十分に機能していたと考える。

◆世界のトップに対しての「慣れ」
私は今まで外国の強豪に対しメンタル的に劣勢になっていたことを否定しない。ヨーロッパ、南米等の強豪チームに対して「勝ちなれていない」ことはメンタル面での大きな負の財産となる。接戦になった時や勝負所と言われている局面において選手は100%頑張っているのだが世界のトップ選手は120%の力を出してくる。ここでメンタルが受けに回るとチームは大きく崩れていくのだが、VNLやオリンピックにおいて世界の強豪を相手に幾度も勝利した経験が、この試合においての大きな土台となったのではないか。この経験から来るメンタルの維持、向上という技術は誰もが持てるものではない。だからこそ最初は世界を肌で感じ続けた石川が、続いて西田が、関田が、髙橋藍がリーダーとなりチームを引っ張り上げたように見ることができた。言うのは簡単だが、習得することは非常に難しい。いきなりTVや雑誌でしか見たことのないスーパースターに勝たねばならない状況を、慣れによりニュートラルな精神状態に持ち込むのだから。

◆今後世界のトップに勝っていくために
今回のフランス戦において全く互角の勝負を繰り広げた龍神達だが、この「互角」というワードに注目してほしい。そう、何度も紙面でお伝えしているが、現在のバレーボールはシステムの崩し合いなのだ。その崩し合いにおいてオリンピックチャンピオンと互角に戦えたという事実がある。そして最後取り切れなかったという事実も。では何故取り切れなかったのか。一番大きな要因は「運がなかった」この試合においてはこれに尽きるだろう。そのくらい僅差であったと考える。

ではその運を持ってくる勝ち方についてはどうだろうか。それは単純なプレーの精度だけではない。フルセットにおける戦い方、勝ち方のカードをフランスのほうが少しだけ多く持っていたのではないか。今まで数多くの試合でギリギリの所を勝ち続けた経験が、勝負どころのブロックであったり最後のエンガペのスパイクに象徴されるシステム外のプレー精度に現れたのであろう。龍神もこのステージに登ることが出来たことが、今回の一番の収穫かも知れない。

そしてデータの面からでも違いが見えた。もっとも顕著に表れた1セット目、龍神の攻撃はレフトサイド50%、ミドル(パイプ含む)17%、ライトサイド33%に対してフランスはミドル70%とひたすらシニエネゼ、ルゴフで点を取りに来た。現在世界の主流は、MB(ミドルブロッカー)での得点が増えている傾向にある。この違いをみると、事実としてMBの攻撃力強化という課題が見えてくる。サイド攻撃においては十分機能したことから「もっと有利に試合を進める」という目的に対して「MBの攻撃力」は欠かせない要素になるだろう。

この課題は今だけの問題ではない。今後の日本バレー界が世界で戦うために非常に重要な課題である。確かにリードブロックが十分に機能しないことが多いジュニア世代においては、マイナステンポは有効な攻撃手段であろう。しかしその選手が将来Vリーグや世界を相手にする場合、ファーストテンポを「知らない」では対応できないし「やったことがない」では習得に時間がかかる。MBだから早く打つ、という時代ではないことを十分にご認識いただきたい。

長々とお付き合い頂き本当にありがたい限りだが最後に1点、フランスに負けて悔しい!という感情を抱かせてくれた選手、スタッフの皆様に最大限の感謝と賞賛を送らせて頂き、今回は筆を置きたい。

次は勝つよ!フランスだろうが、ブラジルだろうが!!

文責:河野裕輔
写真:FIVB

※プロフィール 河野 裕輔(かわの ゆうすけ) 1975年8月1日生まれ ポジション OP.OH 古河4ますらおクラブ-古河2中-足利工大附高(現足利大附高)-中央大学-JTサンダーズ(現JTサンダーズ広島) 現在社業の傍ら、V.TVにて解説者、オーカバレーボールスクール埼玉校にてコーチ業を勉強中。

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