2025-08-18 07:36 追加
夏の東京にふわり小雪が舞う。東京サンビームズ・関沢小雪「バレーをやめるか、環境を変えるか。私は東京を選んだ」 V女子
東京サンビームズ・関沢小雪インタビュー
V女子
学生時代は無名で、Vリーガーとなった今も全国的にはあまり知られていないバレーボール選手について紹介する。
今季、東京サンビームズに加入した関沢小雪。出身は新潟県、身長171センチ、左利き、ポジションはオポジット。得点源となる選手としては小柄な部類だ。
「バレーボールをやめるか、環境を変えるか。その2択でした」
本人の口からその言葉を聞いたのは7月19日、夏真っ盛りに世田谷区で開催された「第1回東京サマーリーグ」でのことだった。外は猛暑。会場内には大型扇風機が数台設置され、コートと観客の熱気を少しでもクールダウンさせるために忙しく働き続けていた。小雪という名とは裏腹の暑い季節だった。
関沢は前年度まで所属した長野県のチームを退団し、「試合に出る」という決意をもって東京にやってきた。
「でもまだやり切ってないって、やり切ってなかったから終わるわけにはいかなかった」
国内リーグは「SVリーグ」が頂点。関沢の移籍先はこれまでと同じカテゴリー、国内2部に相当する「Vリーグ」だ。
■「Vリーグという舞台」、しかし華やかな代表とはかけ離れた場で
通常、夏季はSV、Vリーガーにとってオフシーズンに位置付けられる。オフでもあり、トレーニングなどを中心に地道に努力を重ねる時間になる。
だが、代表に選出されたトップオブトップの選手には別種の過酷さがあり、心身を休める間もなく国際大会でしのぎを削っていた。ほぼ時を同じくして、千葉ポートアリーナでは大勢の観客やメディアを集めてネーションズリーグ(VNL)が華々しく行われていた。
代表選手の活躍はテレビやネットニュースでも頻繁に流れる。それに反して夏季の2部相当のVリーグに関する報道は限られている。
「同じバレーボールでこうも違うのか」
代表選手の活躍を横目に、自身の置かれた立場を見つめ直した選手もいるかもしれない。しかし、自分は今できる事を一つひとつ全力で取り組むしかない。
そんな彼女たちのささやかなお披露目の場が「東京サマーリーグ」であった。
関沢小雪は大学を卒業して2年間、Vリーグ(V2)強豪の信州ブリリアントアリーズに所属した。
この時期、バレーボール界には変革が起こっていた。2024年より新たにSVリーグが創設され、これまでV2と呼ばれていたリーグ2部は新生「Vリーグ」としてスタートを切った。
そして信州アリーズは2024-25シーズン、Vリーグの初代王者となった。
「1年目(V2時代)は全く試合に出れなかったですね」
関沢の入団初年度、信州アリーズには同じポジションに有力な選手がいた。チームの大エース村山美佳、そしてもうひとりチャン・リウェンという台湾の選手だ。
「入団当初は筋力が足りず、打った球がネットに引っかかってコートインするのがほとんどでしたね」
当時のアリーズ監督、原秀治は関沢の過去を振り返ってそう話す。
学生時代の経験も乏しく、まだVリーグの中で戦う力が足りなかった関沢は下積みに徹する1年を送った。
関沢にとっては2年目となる2024-25シーズン、新生Vリーグが開幕する年にチームも大きな転換期を向かえていた。
これまで大黒柱としてアリーズをけん引した村山が現役を引退し、リウェンも退団した。
「誰が出ても同じ力を発揮するのがアリーズ」(前掲、原秀治氏)だが、それでも村山の引退の影響は大きく、選手の構成は大きく変わらざるを得なかった。
「チャンスだと思いました」
そのことに対して、関沢は正直な気持ちを話してくれた。
「それでも結果が出なかったら、バレー自体を辞めるか、環境を変えるしかない。アリーズでの2シーズン目は最初からそう思っていました」
しかし、オポジットはチームの攻撃を左右する要である。まだ駆け出しの関沢にとって現実はそう簡単にはいかなかった。
アリーズは元中国代表の王美懿 (ワン・メイイー)という強力な選手を新たに獲得。関沢の前にはまた別の大きな存在が壁となっていた。
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