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バレーボールマガジン>インタビュー>夏の東京にふわり小雪が舞う。東京サンビームズ・関沢小雪「バレーをやめるか、環境を変えるか。私は東京を選んだ」 V女子 

インタビュー

2025-08-18 07:36 追加

夏の東京にふわり小雪が舞う。東京サンビームズ・関沢小雪「バレーをやめるか、環境を変えるか。私は東京を選んだ」 V女子 

V女子

開幕節で活躍も、移籍を決意

2024年10月、ホーム上田での開催となったVリーグ開幕初戦、関沢はベンチメンバーから外れていた。アリーズのオポジットは鳴り物入りで入団した王美懿。控えには新人の宮﨑聖が入った。対戦相手はこの後関沢が籍を置くことになる東京サンビームズだった。
この時点で関沢はオポジットとして3番手の評価だったのかもしれない。序列として少し難しい状況であった。

オポジットはセッターと対角に配置されるポジションだ。それゆえにセッターがフロントの場合はオポジットはバックラインに立つ。これを逆手に取ってセッターとオポジットの2枚替え(2選手を同時にチェンジする戦術)をすれば攻撃力が維持できる。
この戦術があるがゆえに2番手のオポジットには出場機会が訪れるが、3番手となると使いどころがなくベンチ入りも難しい。

しかし、同カードの2戦目、GAME2で関沢は輝いた。
「試合に出たいという気持ちが強い選手。アピールが強くてね。出ればやってくれると思っていた」
試合後の会見で原監督は相好を崩した。

関沢にとっていくつかの幸運が重なったこともある。
開幕節はホームの上田市自然運動公園総合体育館。土日の連戦を通してチームはなるべく多くの所属選手を試合に出したいという意図もあったのかもしれない。
それが理由かどうかはさておき、日曜日のGAME2では宮﨑に代わって、関沢がベンチ入りを果たした。

スタートは前日に続き王美懿が入る。Vリーグの中では規格外とも思える王だが、土日連戦という日本のスタイルにまだ適応しきれていない部分もあり、徐々に疲れを見せ始める。試合はアリーズが第1セットを奪取し、東京サンビームズが第2セット取り返す。第3セット途中、アリーズ原秀治監督は、王に替えて関沢をコートに送る決断をした。

第3セット終盤、そして第4セットも開始まもなくして関沢は王に替わってコートに立った。東京は追い上げムードにあったが関沢の機動力と切れのあるスパイクが流れを変える。
関沢はアタック8得点、決定率66.7%を記録。ブロックも1本決め、相手のスパイカーの攻撃をシャットした。第2セットを奪取して挽回体制にあった東京を突き放し、アリーズ勝利の立役者になった。

関沢の活躍は専門メディアでニュースとして報じられた。
さらに開幕節での華やかな姿がXなどのSNSで多くのバレーファンから称賛された。控えのオポジットとして居場所を手に入れたかに見えた関沢だが、バレー選手としてまだ経験値の浅い関沢は長いシーズンの中で常時思うようなパフォーマンスを出すことはできなかった。

「アリーズでやっていても出場機会は多く得られなかった。もうこれで辞めようか。でも…まだ自分はやりきったとは思えなかった。引退する時はバレーボールをやりきった達成感を得て終わりたい。だから移籍を決めました」

Vリーグのレギュラーシーズンは28試合、2年目の関沢は10試合13セットの出場に留まった。開幕節での貢献を考えると確かに寂しい数字にも思える。
序盤での活躍後、2024-25シーズン終盤に気持ちが固まった。2025年3月、広島オイラーズとのアウェー戦(3月1日、2日猫田記念体育館)でのことだ。

「メイイー(王)がGAME1で調子が上がらずに、次の日(GAME2)はベンチ外になってしまったんです。チームにはメイイーと私ともう一人オポジットがいるのですが、メイイーが試合から外れた状況でも私はベンチに入れなかった。GAME2はアウトサイドヒッターの選手をオポジットに回すことでメイイーの抜けた穴をカバーしていました。私は違う場所で頑張った方がいいんじゃないかなって、そこで決意というか、強く思いました」

東京サマーリーグで初舞台

その後アリーズは船橋アリーナでブレス浜松を破り、初代王者に輝いた。関沢は王と一緒にビクトリーウォークで会場を一周した。ファンから声をかけられると歩みを止め、丁寧に撮影に応じた。その時すでに関沢の胸中には「移籍」の2文字があった。

7月、関沢の東京サンビームズへの移籍が正式にリリースされた。

「東京サマーリーグ」

夏季期間の実践の場でもあったVリーグ主催のサマーリーグが廃止されたことを受け、今年より始まった都内在籍チームの総当たり交流戦が東京での関沢の公な初舞台になった。出場は東京サンビームズ、三菱UFJ銀行、日本大学、日本体育大学の4チーム。
小規模ながら、貴重な夏季期間の有観客試合である。

第3試合、東京にとっては同日内の第2試合目、三菱UFJ銀行戦に関沢はスターターとしてコートに立った。
関沢はまずサーブで貢献し、2桁に迫る連続ブレイク(サーブ時の連続得点)を記録、フロントでもスパイクを決め、存在感を示した。
上々のデビューと思われたが、試合後に本人から出たのは反省の弁だった。

「良い部分もありましたが、自分自身の詰めの甘さが出たと感じています。セット終盤になってミスをしたり、絶対返さなければいけないレシーブを上手く返すことができなかった。もっと丁寧なプレーが求められています。一つひとつの精度を高めていく必要があると感じました」

インタビューに同席した森田英莉主将(リベロ)に関沢の印象を聞いた。

「ジャンプが軽やかですね。みんなより”ふわり”と飛んでいます。でも、スパイク自体はしっかり地に足がついているというか、コースも考えていますし、これまでの東京にはなかった新たな攻撃の可能性が見えました。自分たちにないものを持っていますね」

コートに雪が舞うようなジャンプとスパイク、それが関沢小雪のプレースタイルだ。

「チームに良い風をもたらしてくれています。そのことは嬉しいのですが、でも…」

森田主将は続ける。

「でも、もっと強引でもいい。これは主将の立場で私が勝手に思っていることなのですけれども、私が、って部分も見せてくれれば、と。今は2枚替えでの出番を想定しているかもしれませんが、スタートから出ることも意識して取り組んで欲しい。そうすれば他の選手達も良い意味で危機感を持ち始める。チームとしても意識が変わる。移籍したばかりでまだ難しいとは思いますが、遠慮なく自分を出してくれた方がチームも良くなります」

関沢に「まだ遠慮がある?」と問うと
「そうですね、全てを出せていない」
と微笑みながら言葉を続けてくれた。

「自分が来てチームが変わった、さらに元気に満ちている姿をファンの皆さんに見てもらいたい。アリーズの時はチームの流れを変えるのが自分の役割でした。東京では途中から入った時はもちろん、スタートからでもチームの雰囲気を作れるプレーヤーになりたいと思っています」

関沢小雪は東京にどんな雪景色を作り出すのだろうか。
Vリーグの開幕が楽しみである。

文、撮影 堀江丈

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