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インタビュー

2025-09-29 21:06 追加

「そして、また走り出す」 群馬グリーンウイングス・白岩蘭奈さんインタビュー SV女子

SV女子

■チーム変革のシンボルとして群馬グリーンウイングスへ

2022年、未勝利の得点王という不可思議な記録を残して熊本を離れた白岩に再び大きな転機が訪れた。
群馬銀行を母体とする2部の強豪、群馬グリーンウイングスに招かれたのだった。

時を同じくして群馬は監督に齋藤真由美、白岩の古巣KUROBEからミドルブロッカーの道下ひなのを獲得し、同年7月には3名のお披露目も兼ねた新体制発表会が行われた。

群馬はチームの衣替えを必要としていた。
群馬はトップリーグへの昇格を視野に入れている。しかし、群馬銀行の傘下であるうちは銀行法などの縛りがあり、販促面などで制約があった。
そういったこともあり、群馬グリーンウイングスは歴史ある群銀、群馬銀行バレーボールチームから独立したクラブチームへの飛翔を準備している時期であった。

実力と知名度と人気。どれも興行としてのバレーボールには不可欠な要素である。3名はそのための象徴的人材でもあった。白岩には得点王という実績もあった。

こういった空気感は華やかな雰囲気を持つ白岩にとって悪いことではない。白岩蘭奈が真の翼を得たのは群馬時代と言っても良いだろう。
群馬入団に際して、白岩は次のように抱負を述べている。

「攻守はもちろん、機動力を活かしたプレーが自分のセールスポイント。自身のことだけでなくチームを勝たせることを頭に入れてプレーしたい」

その言葉通り、白岩は勝利に貢献するサイドプレーヤーとして働きどころを得た。

「白岩蘭奈の躍動する姿が見たい」
レギュラーを固定しない齋藤真由美監督の方針もあり、必ず試合に出るという保証はなかったが、白岩蘭奈を見るために群馬の地に駆け付けたバレーファンは多かった。
白岩をきっかけにして群馬グリーンウイングスを知り、サポーターに定着した人数もそれなりにいるだろう。

■SVリーグへの挑戦。再び勝てない日々

群馬の一員になってから引退までの間、白岩は最初の2年は2部リーグで、最後の1年はトップリーグでプレーした。

アタック打数1013 得点347 決定率34.3%

これが群馬における白岩の通算スタッツ(Vリーグ集計)である。数字だけ見れば可もなく不可もなく、という評価になるのかもしれないが、華のある白岩がコートにいることで確実にチームの士気は上がっていた。

順調なことばかりではなかったが、3年間、白岩はチームの中心人物としてコートの内外で貢献した。

白岩が直面した厳しさという点においては、ラスト1年、SVリーグでの戦いも振り返る必要がある。

SVリーグ初年度、群馬には苦しい戦いが待っていた。2部では盟主的な存在だった群馬も国内有数のチームがしのぎを削るSVリーグでは戦力差という厚い壁に悩まされることになった。
良い試合をしてもあと一歩が及ばない。開幕から負け続けた。

他チームとの戦力差を埋めるべく獲得した外国籍選手も十分にチームにマッチできてはいなかった。
替えのいないリベロ・栗栖留生がシーズン序盤に負傷したことも誤算であった。

待望のSVリーグとはいえ、勝てないのだから愉快な状況ではなかったであろう。
それでも選手たちはトップリーグで戦う矜持を崩さず凛とした姿勢で試合後の会見に臨んでいた。

その態度は立派ではあったが、素の感情も知りたかった。

「なんで負けたんだろう。モニターに映ってる数字、決定本数とか、サーブの数とかあんまり差がなくて。自分たちはどうやって負けたんだろうなって」

接戦を演じた2月のアランマーレ山形戦で白岩はそう話してくれた。
考えた答えではなく、今、率直に何を感じているか。正解でなくていいから、頭に浮かんだことを言葉にしてほしいという記者の無理な要求に、白岩は答えてくれた。

「粘り強く戦えてはいる。でもラリーが続く中での決定打に差があったかなと思います」

■SVリーグで初勝利、チーム飛躍の予感

戸惑いつつも、白岩はしぶとかった。熊本時代に負け続けた経験が活きたのかもしれない。
オポジットとして、2枚替えでの出場が増えていた白岩だが、短い時間でも攻撃センスは冴え、いわゆる「持っている」プレーでコートを盛り立て続けた。

何より、白岩が交代の札をもって待機すると観客席が揺れた。
白岩がコートインすると同時に観客席からも反撃の狼煙が上がるようであった。
――ここから局面を打開する
群馬にスイッチを入れるのが白岩蘭奈の役割だった。

シーズンも終わりを告げようとする3月、クインシーズ刈谷戦での初勝利を皮切りに群馬は「唐突に」勝ち始めた。

「1勝することが今シーズンの目標ではなかったし、ゴールでもないと思っています」
SVリーグでの初勝利に際して、白岩はそう言っている。その言葉が通り、群馬はここから勝ち始めた。

リーグ全敗を予測する声も多かったが、群馬は最終的にシーズン5勝を上げ、来期に繋がる称賛を受けて初年度を終えた。
順位こそ最下位に沈んだが
「群馬は思ったより強い」「これからもっと強くなるだろう」
という印象を残すことに成功したのだった。

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