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インタビュー

2025-09-29 21:06 追加

「そして、また走り出す」 群馬グリーンウイングス・白岩蘭奈さんインタビュー SV女子

SV女子

■ラストシーズン、戦いの中で

白岩自身は2度目のトップリーグ挑戦だった。
4年の間に景色は変わっていた。実業団色の強かった前リーグから、興行色の強いプロフェッショナルなSVリーグへ。白岩はこの変化をどのように感じていたのだろうか。

「そうですね。自分がV1(当時のトップリーグ)にいた時より遥かに演出が高次元になりましたし、SVリーグになって世の中の注目度も高くなっているなと感じました。とはいえ今後、いろんな選手からさらなる改善の声が上がってくると思います。その声を吸収して、もっとSVリーグが盛り上がればいいですね」

使っているのは2部時代と同じ体育館でも、ライティングやスモークの演出で会場の雰囲気は見違えるようになった。
群馬は他のチームと比しても、この点に精力的だった。見慣れたはずの体育館をライブハウスのような熱気ある空間に生まれ変わらせることに成功していた。

白岩のラストシーズンには良い舞台であっただろう。
しかし欲を言えば、もう1年、選手として躍動する白岩蘭奈が見たかった。
まだまだやれた中での現役引退、最後の1年にどう向き合っていたのか問うと、少し言葉を選びながら白岩は言った。

「(引退は)シーズン途中で決意しました。今シーズンをやりきって現役を終えるんだと決めた時から、自分のプレーも変わりだしたと思っています。気持ちを固めた上で臨んだ今シーズンでした」

白岩のその思いに並走するように、群馬というチームは最後に輝いた。

「どのチームでも負けている記憶の方が多かったですし、特にこのカテゴリーで勝つことは本当に少なかったのですけれども、その分、勝つ喜びも深く味わえたと思います。負け続けている中で強いマインドを保ち続けることは本当に難しくて苦しいことだと思います。今シーズン、私自身これでいいのかと疑心暗鬼にもなりました。でも、最後まで軸をぶらさずにやり切ることができた。自分たちが何をしたいのか、それを明確に保ち続けたことで最後に5勝ができたと思います」

■マッチョさんとの出会い

群馬の白岩蘭奈を語る上で、同時期に入団した齋藤真由美監督の事は外せない。

「これからランちゃんて呼ぶね」

それが齋藤真由美監督(現GM)の最初の挨拶だったらしい。
白岩蘭奈の引退と時を同じくして齋藤真由美氏も監督からGMに役割を替え、今2人はラジオ番組に揃って出演するなどコンビで広報活動にいそしんでいる。

昨季開催のオールスターにも選手と監督という立場で2人は選出されている。

「ランちゃんだけかと思ったのに私も選ばれてびっくりポンですよ」
「マッチョさんのことをいちばんわかっているのは自分だから」

師弟関係であり、姉妹のような2人。見方によっては白岩が齋藤氏を支えているようでもある。

「マッチョさんはチーム全体、ファンの気持ちまで高めるような声がけだったり、アクションができる人でした。そういったところがあったから(苦しい状況でも)多くのファンのみなさんがついてきてくれたのだと思います」

「マッチョさん」こと齋藤真由美氏について語る白岩はいつも慈愛に満ちた表情をしている。初めての出会いから相通じるものがあったのであろう。照明を落とした場所でのインタビューだったため白岩の表情をはっきりと伺うことはできなかったが、きっとこの時も優しい微笑みを浮かべていたに違いない。

今季より監督に就任する坂本将康氏の印象も聞いてみた。坂本氏は昨季GMとしてチームをコーディネートする役割を果たしていた。
ちょっと強面だが話術の巧みさに定評があり、そして影での心遣いが繊細だ。そのことを共通認識とした上で白岩は話してくれた。

「PFUブルーキャッツ時代から知ってはいました。みなさん顔だけ見たら怖い人に思うのかもしれないですけれど」

白岩は肩を震わせながら笑い出すのを堪えていたようだった。

「マッチョさんとは正反対のタイプですね。本当に今シーズンは苦しんだので、坂本さんの表情もずっと厳しかった。厳しかったのですけれども、でもシーズンの最後になって坂本さんの笑顔がたくさん見えるようになったんです。これってやっぱり(群馬の活躍が)すごいことだったんじゃないかな」

■チームスタッフとして新たな道を歩む

現役を引退した白岩だが、今度はスタッフとして、引き続き群馬をけん引していくことになる。
さらに群馬が強くなるために、何が必要なのだろうか。

「平均身長とかどうしてもそういった部分では、まだまだ他のトップチームに届かないところがあると思います。だからチーム力を磨くことでもっと上を目指していきたいですね」

いずれは群馬も体格や強度といった面で他の強豪に負けず劣らずの精鋭が集うようになるであろう。しかし代表クラスの選手を揃えるには時間がかかる。チームにも歴史が必要なのである。

群馬は今はまだそこには到達していない。プロビンチャとして、出場機会を求める意欲と野心を持った選手が集う場所だ。だからこそ個々の闘志を一つに束ね、集団としての戦闘力を高めていく必要がある。

白岩の主戦場はコートの外になる。平日にトレーニングを行い、土日が成果を出す場だった選手時代とは異なり、ある意味365日、変わらず常に同じ濃度の努力と結果を求められる。
具体的にどんな仕事をしていくことになるのであろうか。マーケティングといっても幅が広い。

「ホームタウンを中心に、各種の運営に携わることがメインの仕事ですね。群馬県の中にあってもグリーンウイングスの知名度はまだまだだと思っています。バレー教室を開催したり、イベントに参加することで、群馬にはグリーンウイングスというバレーボールチームがあるんだよってことを伝えていきます。まずは認知を広めていきたいですね」

では、チームからもうひとつ視点を上げて、女子バレー全体、SVリーグに求められていることは何なのだろうか。ここについても白岩の見解を聞いてみた。

「現状、女子バレーボールのファンは男性の方が多いですよね。でも、もっと子供やファミリーを呼び込むことが必要だと思っています。家族みんなでバレーを見に来ていただく、そんな機会がSVリーグやバレーボール界に増えていけばいいなと思っています」

本来、バレーボールは老若男女問わず親しみやすいスポーツだ。しかし、トップリーグの観戦文化はどうだろうか。現状、男女ともややコアな層に偏りがある傾向は否めない。
地域と共に発展するということは、チームの「勝った負けた」が地域住民の日常に組み込まれていくということである。
白岩の言うように、ターゲットをファミリー層に広げていくことは今後のバレーボールの発展において重要な課題に違いない。

多くのファンの心を引き付け、会場に足を向けさせる役割を背負ってきた白岩が、今度は別の形でそのつながりを広げていく。
これが白岩蘭奈の新しい挑戦なのである。

5月末のファン感謝祭は選手として最後の仕事であり、次への一歩目であった。現役時代の思い出に感無量となるところもあっただろうが、同時にマーケティング担当の視点も持って壇上に立っていたのではないだろうか。

「今までファン感謝祭は自分達の体育館でやっていたのですけれども、初めて施設の大ホールで開催させていただきました。ですので、とても新鮮な気持ちでこの会に向き合っていました。私たちからも常にファンのみなさんの顔が見えるファン感謝祭でしたね」

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