2014-11-05 17:30 追加
カーテンコール 鈴木洋美さん
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ビューティーブロード
「バレー人生の中でもいちばん辛かったのは、葛和ジャパンの時。芦別合宿に行くのが本当に嫌で泣いてました(笑) 追い込まれる練習は本当にきつかったですね。だけど、イク(成田郁久美)さんやチカ(熊前知加子)さんなどの先輩と仲よくさせてもらって、楽しいこともありましたよ」と鈴木は言う。
90年代後半から2000年代前半頃までは、北海道芦別市が全日本のホームタウンとされ、毎年合宿が行われていた。芦別に行けば、当時の監督だった葛和伸元(現仙台ベルフィーユ監督)の厳しい練習が待っていた。交通の便も決してよいとはいえず、当時は機種によっては携帯の電波も入りにくいことがあるほどで、外部との連絡もとりにくかった。そんな環境の中、練習に耐え抜いた鈴木は99年のワールドカップも12人のメンバーに残ることができた。チーム最年少の20歳だった。
当時、鈴木と同じのMBのポジションには多治見麻子、江藤直美、森山淳子がいて、特に森山の成長が著しかった。大会前、葛和は森山にポイントゲッターとして期待をかけていた。ところが、森山は大会直前、脚に大怪我をしてしまう。経験豊富な多治見と江藤も怪我が治らない状態で、特に多治見のフル出場は難しかった。このポジションで唯一、元気なのが鈴木だった。鈴木は若さを武器に、思い切り、得意のブロード攻撃を相手コートに炸裂させた。恵まれた体格から放たれるスパイクには華があり、「ビューティーブロード」と名付けられた。そして、この大会で「シンデレラガール」と呼ばれたのも鈴木だった。ニューヒロインの誕生である。勢いに乗った鈴木はブロード攻撃はもちろん、サーブでも上位に入り、大活躍。アルゼンチン戦と中国戦で2度のMIP賞も獲得した。「毎試合、楽しくて仕方がなかったですね。大会後はファンレターも箱いっぱいに届きました。当時の私はちょっと調子に乗ってたかも?(笑)」
怪我に泣いた日々からビーチへ
しかし、その後の鈴木は怪我が多く、なかなか活躍できない時代が続いた。特に致命的だったのは、2003年のワールドカップ前に起きた肩の脱臼だった。その年、全日本女子の監督は柳本晶一が就任。数年ぶりに代表復帰した吉原知子が主将としてチームを引っ張り、若手は大山加奈、栗原恵のメグカナコンビに加えて、当時高校2年だった木村沙織が全日本デビューを果たすなど、何かと話題の多い年だった。鈴木も4年前同様の活躍を期待されていただけに、本人も周囲もショックが大きかった。ベンチには入れなかったが、チームには帯同することになり、大会中に迎えた誕生日には、試合直後にチームメイトたちがハッピーバースデーを歌ってくれた。
その後、転機が訪れた。ビーチバレー転向後、2度目の五輪出場を狙っていた佐伯美香がパートナーを探しており、鈴木に声がかかったのだ。武富士はビーチバレーコートを1面所有しており、普段からビーチの動きを練習に取り入れたり、選手がビーチの大会に出場したりしていた。その関係でビーチバレー界との交流があったのだ。
「テル(佐伯)さんが自分を必要としてくれるのが嬉しかった。テルさんもインドア時代、95年のワールドカップでシンデレラガールと言われてて、シンデレラつながりだし(笑)、やってみたいと思ったんです。テルさんはさっぱりした性格で、素敵な人でした」
2006年、ビーチバレー界に転向した鈴木は、その後、浦田聖子や田中姿子などともペアを組み、4年間活動する。
「ビーチは2人で何でもしなければならないし、パスひとつとってもインドアとは全然違うから、最初は難しかったですね。でも、世界中の人と知り合えて楽しかったし、ブラジルの選手を見て、カッコイイ、こんなふうに強くなりたいと思った。ビーチバレーにはもっと早く出会いたかったなという気持ちもあります」
そして、2010年に引退。「やりきった」という気持ちが強かったという。その翌年の2011年に結婚。今は専業主婦だが、普通の生活が楽しいと微笑む。
「朝起きて、お弁当作って、お菓子やパンを焼いて。そんな生活が幸せですね。子どもが少し大きくなったら、自宅でパン教室を開いて、その後、カフェを開く夢を叶えたいな」
聞き手 高井みわ
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