2014-11-18 21:01 追加
2014/15Vプレミア女子展望
女子プレミア開幕戦の様子と展望
SV女子
11月15日、ファンが待ちに待ったV・プレミアリーグが開幕。東京体育館で開催された女子の開幕戦を二日間、現地で観戦した。どの試合も非常に見応えがあったが、特に久光製薬スプリングスと東レアローズの試合は、まるで優勝決定戦を見ているかのような試合だった。
これからどのような激戦が繰り広げられるのか。各チームの開幕戦の様子を踏まえ、今シーズンの展望を語っていきたい。
久光製薬スプリングス
今シーズンも優勝候補の最右翼。全日本メンバーを多く擁し、攻撃力は非常に高い。また、今シーズンからコーチに就任した加藤陽一さんが「チームのアピールポイントはミドルブロッカーの進化」と述べているように、ミドルブロッカー(特に岩坂名奈選手)の成長が著しい。昨シーズンまでは決定力があまり高くなかったクイックだが、今季はファースト・テンポで入っており、しっかりとボールをヒットすることができている。若干セッターのトスが低いこともあったが、アタック決定率は47.6%と非常に高かった。
サイドも攻撃力の高い選手が揃っているため、ミドルブロッカーの成長でさらに穴のないチームとなった。ミドルブロッカーの攻撃参加がさらに増えてくると、サイドの選手も楽になるだろう。
東レアローズ
トルコでプレーした全日本のキャプテン、木村沙織選手が復帰したことで攻守に安定感を増した。また、ミドルブロッカーの攻撃参加が多くなり、さらにサイドが活きるチームとなった印象。ミドルブロッカーには、最高打点で打てるようなふわっとしたトスを供給していた。これにより、ミドルブロッカーの二人がそれぞれスパイクで10得点以上。アタック決定率は二見梓選手が46.2%、伊藤望選手が44%と跳ね上がった。勝負どころでミドルブロッカーを使うのも、非常に良い傾向だと感じた。
課題はセット終盤。ここぞという場面でミスが出る。久光製薬戦では、第4セットにマッチポイントを握りながら逆転を許し、フルセットで敗北を喫した。第5セットも4点差をつけてリードしていながらの逆転負けだった。今シーズンから大会の方式が大きく変わったため、こういった取りこぼしは後に大きく響く可能性がある。それはどのチームでも同じだが、久光製薬戦は非常にもったいない試合だった。
岡山シーガルズ
オポジットが機能するとより攻撃力がアップするはずだ。新加入の浅津ゆうこ選手は、岡山にとって貴重なパワー型のサウスポー。初日のデンソー戦で途中出場し、44%のアタック決定率を出した。守備面を考慮してスターティングメンバーからは外れたものと思われるが、浅津選手はバックアタックも打てる。そのため、今後はスターティングメンバーとして起用するのもよいかもしれない。
新加入の選手も多いため、これまでとは違った戦術・選手起用に期待したい。全日本メンバーに定着した宮下遥選手もいるため、岡山シーガルズのバレーを「国内で勝てるバレー」ではなく、「世界に通じるバレー」にシフトしていってほしい。
トヨタ車体クインシーズ
開幕戦、上尾にストレートで敗戦。あまり良い部分がなく終わってしまった。特にレセプションが乱れ、サイドへのトスも低くなることは多かった。また、オポジットが機能していなかったためか、セッターの藤田選手はレフトにトスを集める。しかし上尾はマーフィー、荒木絵里香選手の高い2枚ブロックが待ち構えている。トスも低く打ちきれないので、ブロックに捕まるという悪循環。
それでも、ミドルブロッカーの衛藤智美選手はアタック決定率が52.9%と活躍。ミドルブロッカーの使い方はとてもよく、しっかりと余裕を持って打たせることができていたように思われる。よって、まずはサイドへのトスの高さを修正することが求められる。
NECレッドロケッツ
今シーズンは再び上位に食い込んできそうだ。見どころは、JTから移籍した山口かなめ選手のトスワーク。アタッカーの持ち味を活かす良質なセットアップをしながらも、自ら強気に攻める。長いラリーの最後、日立のコートに突き刺したツーアタックには、観客も度肝を抜かれた。
ミドルブロッカーの打数がサイドの選手並みに多いのがNECの特徴だ。島村春世選手の打数は28本と、サイドの白垣里紗選手(31本)に次いでチーム2位。前衛だけでなく後衛からも攻撃に参加することができるのも強みである。昨年まではミスが非常に多く、波のあった白垣里紗選手も急成長しており、上位進出に期待が集まる。
日立リヴァーレ
今シーズンは「ブロックが追いつかないくらい速いバレーを目指す」という方針を掲げているようだ。しかしながら、開幕戦の様子を見ると、これを改めない限り今シーズンはかなり厳しい戦いが続くかもしれない。
クイック、サイド、いずれのトスも低く、アタッカーが打ち切れないシーンが多くあった。アタッカーの長所どころか、セッターの佐藤美弥選手の持ち味さえも消えてしまっている。また第2セットまでアタック決定率56.3%だったパオリーニを下げるなどの采配も見られた。今後、チームとしての方針などを見直す必要もあるかも知れない。
デンソーエアリービーズ
今シーズンからプレミアリーグに復帰。全日本女子が取り組んでいた「ハイブリッド6」という戦術に近いものを目指しているように思う。サイドアタッカー、ミドルブロッカー、そしてセッターの役割をもこなす鍋谷友理枝選手がポイントとなる。
トスはクロアチア人サイドのミア・イエルコフに多く集まる。初戦の岡山戦は43.1%とアタック決定率が高かったが、今後は徹底的にマークされることが予想される。初戦はミドルブロッカー(のポジションに入っていた)石井里沙選手、井上香織選手のアタック決定率が15%前後と非常に低い数値が出てしまった。サイドの選手を楽にするためにも、今後はミドルブロッカーが多く得点に絡んでくることが必要だ。
初戦は岡山シーガルズにストレートで敗れてしまったが、この戦術がはまれば非常におもしろいチームとなるだろう。
上尾メディックス
今シーズンが初のプレミアリーグ参戦となる。先日、開幕記者会見で取材をした際に吉田敏明監督が話していた「アタッカーの能力を最大限に活かすバレー」ができれば、上位に食い込むこと、あるいは優勝も夢ではない。
ミドルブロッカーには荒木絵里香選手、プレミアリーグ昇格に大きく貢献した青柳京古選手、サイドには皆本明日香選手や近藤志歩選手など、能力の高い選手が揃っている。得点源は10月の世界選手権で金メダルを獲得したアメリカのオポジット、ケリー・マーフィー。非常に多くのトスがマーフィーに集まることが予想されるため、ミドルブロッカーの攻撃を多く絡めていくことが鍵となるだろう。攻撃の起点となるセッターの土田望未選手のセットアップに注目。
プレミアリーグに昇格してすぐのチームは、リーグ終盤に失速し連敗することが多い。プレミアリーグは、チャレンジリーグとは全くの別物。上手く調整することが必要である。
シーズンを通じて、どのチームもミドルブロッカーが鍵になると考える。今シーズンの開幕二日間は、ほとんどのチームでミドルブロッカーの活躍が目立った。
全日本女子の眞鍋政義監督は、「日本のミドルブロッカーは得点力が低い」と話していたが、それは誤りかもしれない。日本のミドルブロッカーも非常に高い能力を持った選手が揃っていることを、開幕二日間で再確認した。シーズンを通して、全チームのミドルブロッカーはどんどんアピールしてほしい。
今シーズンから大会方式が大きく変更されたV・プレミアリーグ。レギュラーラウンドを勝ち上がった6チームが出場するファイナルステージのロゴは、真ん中で大きく輝く一つの星を5つの星が取り囲むというもの。大混戦が予想される今シーズン、どのチームが最も輝く星となるのか、非常に楽しみだ。
文責:高住翔
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