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インタビュー

2017-02-13 17:25 追加

ボヨビッチ「日本の企業スポーツのシステムは、優れたものだと思っている」

デヤン・ボヨビッチインタビュー

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東レアローズに7年間所属し、Vリーグのことも熟知している元セルビア代表、デヤン・ボヨビッチさんに、スーパーリーグについての意見を聞いてみました。ボヨビッチさんは、全日本男子の強化のためのプランを自主的に発表されるなど、日本男子バレー界に深く心を寄せていますOLYMPUS DIGITAL CAMERA

——スーパーリーグについて、ご存じですか?

ボヨビッチ(以下、デキ):しばらく前に、福澤達哉選手のインスタグラムでその情報を知りました。とても興味深いことだと思います。ただ、アマチュアリーグから100%スーパーリーグへはとても長いプロセスが必要だろう。スーパーリーグの結果が出るのはさらに時間がかかると思う。東京五輪までにスーパーリーグへ移行して結果が出るかどうかは解らない。選手もスポンサーもファンも、プロに移行して行くにあたって、気持ちの面も変えていかないといけないのは繊細な問題だと思う。 スーパーリーグ化するにあたって選手にもメリットがあると同時に困難もあるだろう。なぜならプロにはビジネス面も大事になってくる。ビジネスに対する教育もやらなくてはいけない。

全ての情報を知っているわけじゃないけれど、財源に関していままで通りチームが持つのか、スポンサーを募るのか、これは大きな問題。いまチームを持っている企業はグローバル企業で、とても大きい会社だけど、いまの大企業だけがスーパーリーグを支えるとなった場合に、自分のチームを支えてきたものがリーグ全体を支えることになり、さらにビジネス面まで支えなくてはならない。そうなると持続できるかどうか、とても疑問に思う。 プロになると引退後の生活がとても重要になってくるけど、引退後のマネージメントが一番の問題になってくるでしょう。

バレーボールレベルを高めるという狭い視野だけで考えると利益があるかもしれないが、たとえばキャリアなど広い視野で考えた場合、それほど価値があるかどうか解らない。 私の個人的な考えだけど、日本はスーパーリーグに移行する必要はないのではないかと思う。 石川選手のように個人的に海外に挑戦したりだとか、とても有名な監督をチームに呼ぶ方が、リスクも下がる。日本バレーボールの質を高める分には、そちらの方が効果があって良いのではないかと個人的には思う。

私はグローバルなバレーボール業界のことを良く知っているが、年々男子バレーボールをやる子供たちが減っている。スーパーリーグになることによって子供たちが増えるかどうかは、解らない。セルビアにもイタリアにもプロリーグはあるけどそれでも子供たちは減っているから、プロリーグあるかどうかは関係ない。スーパーリーグの目的は確かじゃないけど、私がもっている情報から考えると、スーパーリーグはベストな選択ではない。本当に手を叩くだけでスーパーリーグに変わるなら賛成だけど、現実は段階を経て変わっていかなかくてはいけないからそこまで賛成はできないね。

――日本に来るときは、プロリーグだと思っていたのですか?

デキ:いや、プロではないと知っていた。海外選手の役割は、日本とヨーロッパなどでは、全く違う。

——セルビアやイタリアのプロ選手の年俸はどのくらい?

デキ:国によって違うけど、セルビアは国民の平均年収と同じくらい。高いお金でモチベーションにつながるようなものではない。セルビアのリーグは給料が低くて、ナショナルチームにになると海外に出て行ってしまう。国内のチームは平均年齢が若くて平均給料も安いのです。

——本当の意味でプロリーグなのでしょうか? バイトとかしているのですか?

デキ:バレーしかしていない。なので苦しい。だからこそナショナルチームを目指して、海外を目指す。だからモチベーションが上がる。

――サラリーが高いのは、どの国ですか?

デキ:同じリーグでも、20倍くらい差があって、イタリアの選手で世界的なトッププレイヤーなら40万ユーロくらいで、全体の約5%くらい。下の方だと2万ユーロが2%くらい。リーグというよりは、選手個人がどれだけ稼げるかだね。 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

——スーパーリーグ構想の裏には、ナショナルチームのレベルアップという意図があると思いますが、海外選手枠を増やすという案についてどう思いますか?

デキ:先ほども言ったように海外選手を増やしても、日本人選手の機会が奪われるだけでリーグのレベルアップにはならないと考えています。 Vリーグのレベルアップが、ナショナルチームのレベルアップになることは確かだけど、レベルの上げ方が問題。お金をかけて外国人選手をたくさん呼んだら、日本人選手のモチベーションが下がってしまう。

来る選手も良い外国人選手なので、外国人選手と同じように出来ない自分たちがいて、それを超えられない壁を感じて、モチベーションが下がってしまう。女子がいい結果が出ているのは、選手母数がたくさんあるので良い選手を選べるから。だけど男子選手は母数が少ないので、なかなか選手が揃わない。

僕が思うレベルの上げ方としては、いかに友達にバレーボールの魅力を伝えて競技者数の母数を増やす、結果いい選手の育って、それが結果的に日本人選手の全体的な向上につながる。 なんで女子が女の子がバレーボールへ行くのか、女子は暴力的なアニメを見ないから。バレーボールは接触プレーがない。男の子は戦いごっこが好きなので、接触プレーを嫌がらない。これだけじゃないけど、一つの考え方としてあるんじゃないかなと思う。

——ブロック力が劣る日本人ばかりなので、それに対して打っているとアタック能力も上がらない。なので二人くらい外国人を入れてはどうかと思うがどうか?

デキ:もし、外人チームがいないとどうなると思いますか?

——鎖国状態でレベルがまた落ちると思うのですが。

デキ:今現在でも、国内試合じゃ決めれるのに、代表の試合では決められないということが起こっている。だけど、国内選手だけなら子供たちが自分にもチャンスがあると思って人口が増える。そこからどうつなげていくか。 外国人枠が一人違うだけでも大きな影響だけど、それがどう転ぶか解らない。日本人だけのリーグを作ってやってみたら、意外とおもしろいんじゃないかと思う。チャンスが増えて、自分もやってみたいという子供が増えるのではないかと思うので。

——そうですかね…。

デキ:すぐには結果は出ないけど実験的にやってみてはどうかと思っている。

——日本人同士のレベルで戦っていては、レベルアップは出来ないのでは?

デキ:チームをレベルアップする目的ではなくて、どうなるのか結果をみる為の実験として日本人のみでプレーするというのもいいのではないかという意味です。 日本人だけのチームで、そこのチームでやりたいという強い思いをもった子供たちが出てくるかもしれないし、外国人がいるチームに対して日本人だけでどう作戦を組み立てるか考える、結果にならないかもしれないけど良いフィードバックができるのではないかと思う。少なくとも僕は、そう信じている。石川祐希や柳田将洋や山内晶大、福澤達哉など、日本人だけのトッププレイヤーのチームがあったら、また違うかもしれないし。

——先日カジースキにインタビューして、カジースキが日本人は20センチ足りないといっていたのですが、どう思われますか。

デキ:平均身長の差は、もう分かりきったことで、それは事実であってどうしようもない。そこにつべこべ言ってアドバイスするのは、現実的ではない。夢でしかない。高さのことをいうのなら話しても時間の無駄。セルビアにも2m以上の選手はいっぱいいるけど、よいプレーができていない選手もいるので、高さだけの問題じゃない。高さのある選手なら、日本にも2メートル以上の選手がいるが、今現在その選手はトッププレーヤーじゃない。それが事実。

――完全なプロ化は、日本には必要ないと思われますか?

デキ:そうだね。日本の企業スポーツのシステムは優れたものだと思っているよ。選手として、セカンドキャリアのことを考えたときに、素晴らしいと思った。確かにプロ化して競争を激しくした方が、手っ取り早い強化にはつながるかもしれない。だけど、競技人口のことを考えたら、今のプロ選手も混在するシステムが一番良いんじゃないかな。

聞き手:中西美雁・大塚淳史
通訳:堤敏樹
編集補助:横幕祐美

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