2017-09-03 10:55 追加
迫田さおりさん 引退に寄せて(後編)「ロンドン五輪の最後は、みんなでとった1点」
SV女子 / 全日本代表 女子
──今年はグラチャンバレーがありますが、4年前には「MB1」という戦術の中でミドルとして活躍。
眞鍋さんが考えた新しい攻撃で、チーム全員がそれに向けて頑張ろうということだったので自分もと。難しいなって部分はありましたが、セッターがミチ(中道)さんだったので安心してこうしようと話してやれたのでよかった感じでした。
──そこからリオ五輪へはどういう気持ちで?
ロンドン(五輪)が終わってからはいろいろ考えていたので、リオ(五輪)は頭の中にはなく、この1年この1年という感じでやっていました。
──リオ五輪予選も厳しい戦いでした。迫田さんも本当に頑張ってくれました。
たいへんでした。でも絶対行かないといけないっていう感じだったのでやるしかなかった。
──タイ戦の第5セット6-12からの逆転は今思ってもすごかったですね。
あれはもう「奇跡」でしかないです。まさかです。フルセット6-12からひっくり返ることはまずないですから。もしかしたら…と思ったときに、“絶対に負けられないし後悔したくない。諦めたくない。何が何でも最後の点数までやる”と。途中から入りましたが、ミユ(長岡望悠)が頑張ってた分、私も頑張らなきゃって。
──オポジットのポジションは2人で助けあっていていい感じだったと思いました。
ほんとですか。ミユ(長岡)がああいう人柄なので。一緒にやれてよかったと思います。今、ミユはけがして戦列を離れていますが、ミユは自分のことをしっかりわかっていると思うので、周りからどう言われてもミユのペースでミユのしたいスピードで、少しずつ「新しいミユ」になって、バレーボールをやってほしいと思います。
──そうして出場した二度目の五輪リオはいかがでしたか。
結果としてはみんな納得していないと思います。自分も。ロンドン(五輪)とは違って上の立場だったので、もっと自分が何かをしていたらよかったんじゃないかとか今もいろいろ考えちゃいますね。何もしてあげられなかったから。サオリ(木村)さんがキャプテンでいろいろ考えている中で私は何ができていたんだろうって。そういう思いがすごくあります。
──現役時代を振り返ってみて、「迫田選手」はどういう選手だったと思いますか。
アスリートにむいていない選手でしたね。向上心もなく自信もなく欲がない。人前で話せるような選手じゃないとずっと思っていました。
──迫田さんにとってバレーボールはどういう存在ですか。
バレーボールは大好きです。小中高、東レに入ったばかりの頃までは好きか嫌いかもわからなかったんですが、(現役の)後半になりかけて、私はバレーボールが大好きなんだって気づきました。できなかったことができるようになる嬉しさもそうですし、一番は仲間がいるってことですね。助けて助け合って、支えて支え合って、その中でいろんなことを学べて成長させてもらったので。あって当たり前のような感じ。出会ってよかったです。
「バレーがなかったら何してたんだろうね」って家族でもよく話しています。バレーボールというスポーツにも感謝しています。テレビでもゴールデンタイムに放送してもらったり、恵まれた競技だなって思います。そんな競技にたまたま自分が出会って選手にさせてもらって、ここまで続けてこられたことはよかったと思います。そんなバレーボールの楽しさを伝えたり、楽しくプレーしてもらうためにいろいろできたらと思っています。
──引退されて、新しくやってみたいことはありますか。
今それを探しているところです。次に自分が何をしたいのか、何を目指したいのかを考えていかないといけないなって思っているところです。できれば環境も変えたくないし冒険もできないタイプなのでなかなか……ですが。今のところは地元にいますが、でももしまたこれがやりたいってことが見つかったら、その場所に行くと思います。
──荒木さん、木村さんのように結婚も?
憧れはありますね。でも結婚できないんじゃないかな、しないんじゃないかなと思う自分もいたりして。結婚はしたいですが、したいっていうのが憧れでいいんじゃないかなとも。しなきゃいけないとか早くとか思っていたら自分がダメになるので、そういうタイミングが来たらラッキーと思ってしたらいいんじゃない、みたいに軽い感じで考えていようと今は思っています。流れに乗ってです。
──それでは、それぞれにメッセージやエールをお願いします。まず東レから。
私を育ててくださりありがとうございました。これからもお世話になります。先輩方にも後輩にも、もちろんスタッフの方にも感謝しています。こんな私ですが、末永くよろしくお願いします。
東レというチームにはいつもハチャメチャであってほしい。試合でもジャッジについて、え? って思うことがあったら、菅野さんもみんなも「なんで、今の違うじゃん」「なんでよ」みたいになる感じ。そういうある意味チームワークのある東レアローズでずっといてほしいです。勝ったときにみんなで(アクション)できるっていうのも嬉しいことですし。時代って変わっていく部分もあると思うんですが、いい所はしっかり残してもらって、また新しい東レアローズを作っていってほしいと思います。
──全日本で戦っているメンバーには。
世界で戦うということは本当に厳しいことだと思いますが、今外から見ていても、世界と戦っている姿からたくさん勇気をもらってるなって。一戦一戦の戦いにはすごい気持ちを作らないといけないですし、試合に出ている選手も出ていない選手もいろんな思いを持って日々戦っていると思うんですが、リラックスすることも大切に。そして試合になったら全員で戦ってもらいたいです。
私は試合に出られないことも多かったので、そういう時にはチームの役に立ちたいのにできなくて「この世界はコートに入らないと意味ないじゃん」「何の貢献もできないじゃん」と自分が悔しくて情けなかった。他の人が選ばれていたらもっともっと貢献できていたんじゃないかとかマイナスに思ったりもして……。でもその悔しさがあったから次にステップアップできる、精神的に強くなるタイミングでもあるんじゃないかなって。一回落ちてもいい、気持ちが折れてもいい、でも折れたままじゃなくて元に戻す。そこからはい上がったら前よりもさらに頑張れる気がするので。
全日本で、そこに立って戦っているだけでもほんとにすごいことだと思います。だから自信を持って戦ってほしい。頑張れとかは言えないですが、私もこれからもずっと注目して応援していきたいと思っています。
──最後に、長い間そして今も迫田さんを応援してくれているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
ファンの方とはあまり親しくしゃべることができなかったですが、それでも毎試合応援にきてもらったり手紙を書いてくださったり、なんでこんな私をここまで応援してくれるんだろうって思っていました。最後まで応援してくださって本当に感謝しています。
たくさん励ましの手紙をいただいきました。試合で負けたときやふがいない試合をしてしまったときにも手紙を読ませてもらって、ああこういうふうに思ってもらっているんだ、頑張んなきゃって思ったり、学生の子が手紙にいろんな目標や夢を書いてくれていたら、その子も前向きに頑張っているんだから私もくじけず頑張らなきゃと、励まされて立ち直らせてもらったり。最後まで頑張れたのはファンの皆さんのおかげです。応援してもらえるって生きている中であまりないことなので、本当に感謝しています。
今一番思うのはこれからも東レアローズのファンでいてもらいたいなって。自分自身も全力でアローズを応援したいって思っていますし、ファンの皆さんにもこれからもみんなでアローズを応援してもらいたいです。
私自身はこれから何をしていきたいか考えながら、この先またのめり込めるものに出会えるように模索しながら過ごしていきたいと思っています。
今まで本当にありがとうございました。
写真:FIVB
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