2018-12-30 16:37 追加
豊田合成・トミー監督 敗戦悔しさでロッカーに“籠城” 天皇杯準決勝
天皇杯準決勝豊田合成会見 トミー監督
SV男子
天皇杯準決勝・豊田合成トレフェルサは12月22日、JTサンダーズに0−3(18−25、27−29、16−25)で敗れた。試合後の会見場では、大会運営員たちがバタバタと動き回って、困っていた。「豊田合成さんの監督が控え室に籠っちゃって出てくれないようなんですよ…」トミー・ティリカイネン監督がどうやら「敗戦の悔しさから出てこないみたい」とのことだった。本来であれば、この日の試合後会見には、豊田合成の選手、監督の会見を行ってから、JTの会見を行なう予定だ。豊田合成の高松卓矢、前田一誠の会見が終わって、5分以上経ってもトミー監督は会場に現れず、結局、先にJTの会見が始めることとなった。JTと監督、選手らの会見が終わって数分後、会見場には半分ほどしか記者は残っておらず、もう開かれないと思っているところに、「豊田合成さんの監督の会見を始めます」と運営員が呼びかけ、トミー監督が会見場に現れた。トミー監督の、普段の温厚な“ナイスガイ” ぶりを知っているだけに、会見のドタバタ遅刻劇は珍しかった。
準決勝での豊田合成は、JTのサーブにプレッシャーに絶えずさらされ、エドガー・トーマス、劉力賓の力強いスパイクの対応に苦慮していた。第2セットこそ終盤までもつれて、27−29で惜しくも取り損なったが、0−2から挽回を狙った第3セット、リーグ戦でのJTとの力関係、豊田合成の持つ底力を考えれば、16−25という点差で失うのは、少し意外というか、らしくない淡白な終戦だった。
この試合のポイントは、トミー監督の選手交代だった。第1セット13−17の場面で、サーブを打ち終わった高松に代わり、内定選手で明治大学4年の小川智大をリリーフレシーバーとして投入した。サーバーだったJTの山本将平は狙い目とばかりにジャンプサーブを打つと、小川の守備が崩れてサービスポイントを取られる。その後も小川は狙われ続け、豊田合成の守備が不安定になり、結局周囲の選手がカバーするシーンが散見した。トミー監督は高松が前衛に戻ってくるまで小川を使い続け、最終的には18―25でこのセットを落とした。第2セットを取り切ればという声もあるかもしれないが、この試合を決定づけたのは、トミー監督の采配のように感じた。
小川は明治大学のキャプテンで、リベロとして、12月2日に終わった全日本大学選手権(インカレ)でチームを3位に導いている。ただ、豊田合成の選手としては、12月9日のVC長野戦で経験したのみ。この日の高松のサーブレシーブの返球率が、良くはなかったとはいえベンチには、今シーズン、リリーフレシーバーとして多く出場する岡本秀明がベンチに控えていた。また、この交代だけでなく、イゴール・オムルチェンがいつもの決定力を発揮しきれない中で(それでも、フェイントやプッシュなど技術を駆使していたが)、イゴールを出し続けていた。タラレバではあるが、今シーズン動きにキレを見せる椿山竜介や、山田修造といったアタッカー陣を、試合のリズムを取り戻すためにもワンポイントでも使う場面はいくらでもあったが、最後まで起用されることはなかった。
会見場に現れたトミー監督は、「JTがいつも以上に良いプレーしたのが我々の敗因。第2セットを取れていれば、ゲームの展開が変わっていたかもしれない。1球、1つの小さな変化でゲームの展開で、全てが変わったことがあった。我々はまたチームを作り直して、強いチームとして大きな舞台に戻ってきたい」と試合を振り返り、「例えば、最初の試合(豊田合成の前に行われた試合)でパナソニックはクビアクが怪我して、そこからゲーム展開が変わった。そのように、我々のゲームに関してもそういう場面が、全体を通していくつもあった。多くのチャンスがあった」と悔やんだ。
小川の投入が試合の流れを変えたのではないか、という質問に対しては、「失点する場面はチームとして合成としての失点であって、彼一人の責任ではない。責任は私にあるので、言われるのは仕方ない」と責任を負い、「小川にはチームに新しいアイデアや新しい事をもたらしてくれることを期待しています」と答えるに留めた。
リーグではここまで9勝3敗。1月5日から再開するが、1月は上位陣との試合が多く組まれ、正念場だ。天皇杯で嫌な敗れ方をしたとはいえ、「我々はシーズンを通してコンセプトを持って臨んでいる。新年を迎えてコロっと変わる訳ではない。マジシャンのように全てが変わることはない」とトミー監督、豊田合成のバレーがぶれることはなさそうだ。
ただ、トミー監督らしくない会見出席をめぐるドタバタ劇、試合での采配は、少し気になるところ。トミー監督が精神的なリフレッシュをすることが、リーグ再開後の大きな鍵かもしれない。
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