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コラム

2021-04-20 12:39 追加

アメリカ女子バレー、プロリーグ 5週間を戦い終えて

アメリカプロリーグ

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閉会式。受賞者5人と両端の男性がAUの発案者で共同創設者のJon Patricof氏(兼CEO、左)とJonathan Soros氏 撮影:Athletes Unlimited/Jade Hewitt

アメリカで女子バレーのプロリーグAthletes Unlimited(アスリーツ・アンリミテッド)が2月27日に開幕し、3月29日に5週間の日程を戦い終えた。(新リーグの概要や楽しみ方はバレーボールマガジンのサイトのコラム欄2月26日3月17日掲載記事を参照。)

■ファーストシーズン終了
チームのメンバーが毎週変わり、選手の個人成績のポイントで賞を競う新リーグ、アスリーツ・アンリミテッド(以下、AU)。45人(44人でスタートしたが、ケガのため欠場、補充あり)の中から、最高ポイント獲得選手、初代チャンピョンにOHジョーダン・ラーソン選手(写真中央、4569ポイント)が輝いた。次いで、2位OHベタニア・デ・ラ・クルス選手(左から3人目、3690ポイント)、3位Sブリー・キング選手(左から2人目、3675ポイント)、4位OHアウリー・クルス選手(右から2人目、3582ポイント)が表彰された。また選手とファン(アンリミテッドクラブ有料メンバー)の投票により、Lノマリス・ヴェレス・アゴスト選手(右から3人目)はGelicoディフェンス選手賞を獲得した。

■充実した5週間

AUの発足に中心的な役割を果たし、コート内外でリーダーシップのお手本だったジョーダン・ラーソン選手。「AUで大学リーグから来た選手の力をもっと上げて、次のステップにつなげたい」と願っている。 撮影:Athletes Unlimited/Jade Hewitt

5週間という他の国のプロリーグに比べれば短い期間は、AUならではの特徴でもある。2月初めから徐々にメンバーが集まり、プレシーズンマッチなどがあり、その後、週末に3試合が5週間続いた。AUという組織は、バレーボールだけではなく、他にソフトボールとラクロスのプロリーグも併せ持つ。だからバレーボールだけに1年の大半を費やすことはできない。選手の立場からすると、「確かに連戦でタフな5週間でした。でもまだもう少しやりたいかな?」(サマンサ・セルジャー・スエンソン選手)、「どれもレベルが高く拮抗した試合だったけれど、それには慣れていますし、そのための準備も初めからできています。私は短いと思います」(ベタニア・デ・ラ・クルス選手)といった意見もあった。

選手、特に代表チームの選手の過密スケジュールについては、近年、世界の多くの選手のインタビューで、「バレーを長く続けるために代表チームはここまでで、今後はクラブチーム一本に絞らなくては」というベテラン選手や、「けがをしても、ゆっくりリハビリにかける時間が無く、次の試合に追われてしまう」という意見が聞かれる。FIVB国際バレーボール連盟でもいくつかの大会を止め、スケジュールの見直しを図っている。だから今回のAUのやり方は、バレーボールのプロリーグはこうあるべきという概念にとらわれず、こんなやり方もできるという新しい提案になった。

■データバレーの世界に入りこむ
各セット・試合の勝利ポイント、MVPポイント、個人スキルのポイントの合計でランキングを競っていくのも、この新リーグの見どころだ。世界中で、試合中に監督やコーチがパソコンやタブレットで、アナリストのデータを元に作戦を練っているが、そこで使われているのがデータバレーというソフトだ。大雑把に言えば、どの選手がどんなプレーをしてどうなったかを記録、分析する。AUのリーグのポイントシステムはこのデータバレーを元に考えられている。試合中、リアルタイムでポイントの計算が公式サイトのリーダーボードや放送中の画面に出るので、視聴者がデータバレーの体験をできるという感じだ。ブロックがあまり決まっていなければ、その後ろでディグが上がっているかどうかを見たり、スパイクの打数が多い割にポイントが伸びていなければ、ミスがどれくらいあるのかなど、色々な角度から数字を見ることができる。

ポイントランキングで最後の1試合を残し、ベタニア・デ・ラ・クルス選手は5位にいたが、最終試合の3セット目に入ってもまだ5位だった。4人の表彰選手に入るには、彼女のプレーひとつひとつにあと何ポイントで追い抜く、ここでスパイクが決まれば何ポイントという様に興奮の連続だった。そして試合終了間際20点過ぎに4位に入り、最後はチームの勝利ポイントを加え2位に食い込んだ。

■コーチの側から見たAU

オンラインドラフト会議(写真上部)とタイムアウトでアドバイスをするミヤシロコーチ。(Facebookより)

選手を選んでいくドラフトや成績のポイントシステムなど選手にとって初めてなら、コーチにとっても未知の世界だったに違いない。タマリ・ミヤシロコーチ(アメリカ代表アシスタントコーチ)に体験を聞いてみた。

――過去に何度かプロリーグが開幕しましたが、数年後には終わってしまうという繰り返しがありました。どうしてアメリカで女子バレーのプロリーグが根付かなかったのでしょうか。

タマリ・ミヤシロ(以下タマリ):私の考えでは、常に2つの大きな山があったと思います。まずアメリカの中で女子バレーは常に他の競技のプロリーグと存続を争っていかなければならなかったこと。第2に女子バレーの海外のプロリーグが金額面でとても良い条件であることだと思います。世界中にハイレベルの良いリーグがあり、その中でアメリカに選手を留まらせるのは大変なことだと思います。

――AUの話を初めて聞いた時はどのように思いましたか。

タマリ: なんて面白そうなのと思いました。バレーボールという競技を考える時、通常のゴール、目標を目指していく選手たちを思い浮かべると思います。でもそこに選手自身が毎週チームを変えていくという要素が加わったんです。そうですね、面白くて新鮮だと思います。

――コーチにとっても毎週、チームのメンバーが変わるというのは初めての体験だったと思います。ドラフトではどのようなアドバイスをしたのですか。ドラフトでその週のメンバーが決まり、練習が3日間だけで試合に臨むのは大変でしたか。

タマリ:ドラフト会議のある朝、コーチはその週に自分が担当するチームのキャプテンと会います。コーチとして私が心がけたことは、キャプテンが必要とするもの、望むものをしっかり聞くということです。そこを基本に、どの選手がどうプレーしていてチームに合うかという考えを伝えます。ドラフトの最中は、キャプテンの各選択がうまくいくように、一人の選手が決まったら、あとどの選手が残っていて、ポジションを正しく埋めるのにキャプテンが集中できるように助けるようにしました。試合前の練習では、最大の焦点は選手間の連携です。セッターとスパイカーの連携もそうですし、あとは、例えばサーブのレセプションの様な一般的な選手間のコミュニケーションも大事です。週末の3連戦に向けてしっかり調子をあげることも必要ですが、それと同時に3日間戦い抜けるように休息をとらなければいけないというバランスもあります。

――日本の選手でAUにいたらおもしろいと思う選手はいますか。

タマリ: 自分の長年の国際経験からみて、日本の選手はゲームに必要なすべてのスキルを身につけていると思います。ボールコントロールはいいし、とてもハイレベルにゲームのスキルを実行できるということはとても価値があります。ですからこのリーグの特徴を考えると、すべてのスキルができるということは、ドラフトの際にとても役に立ちます。またAUには何人かの外国人選手がいますから、おそらくいつか日本の選手を招待することもあるでしょう。そうなればとてもおもしろいと思いますし、日本のファンの皆さんも喜んで頂けると思います。

4. 最終週にキャプテンになったSブリー・キング選手はカナダからの参加。「みんなの信頼関係と団結力」で、自信に満ちたトス回しを見せ最後に3連勝し、最終ランキング3位になった。 撮影:Athletes Unlimited/Jade Hewitt

あるチームが2日連続してディグが好調だったので、コーチから何か指示があったのか聞いたところ、「前週の試合で相手のプレーも分かっているので、選手同士で、ここはこうだね、というような分担を確認すれば大丈夫です」(デジャ・マクレンドン選手)という答えだった。ミヤシロコーチの話を聞いてもわかるように、このリーグではキャプテンの考えや選手の自主性が第一で、コーチはキャプテンや選手の力が最大限に発揮できるように手助けをするというようなスタンスだ。AUにアドバイザーとして参加しているアメリカ代表カーチ・キライ監督にはこのやり方はどのように映ったのだろう。「バランスの良く取れたチームには何が大事か、何が助けになるのかを、選手それぞれが考えることができたと思います。例えば、ジョーダン・ラーソンはオールラウンドな選手ですが、カースタ・ロウはより攻撃的な面があるという様に、違った要素があります。ゲームをより深いレベルで考えることができ、構成要素をどのようにするか、それをどうベストなチームとしてまとめていくかなど、重要なスキルを身につけられたいい経験になったと思う」と高く評価した。

5. アンリミテッドブックと受賞者のメダル。 撮影:Athletes Unlimited/Jade Hewitt

■若い世代の目標に
リーグには6ヶ国から8人の外国人選手が参加した。中でもファンが盛り上がったのは、北京、ロンドン五輪連覇のブラジル代表シェイラ・カストロ選手とリオ五輪銅メダリストのジョーダン・ラーソン選手の競演だ。本人たちも海外のチームでも一緒になったことがなく、お互い尊敬しあうライバルと同じチームで戦えた事を「特別な瞬間」と楽しんでいた。

アンリミテッドブックというリーグ参加選手名を記載する台帳がある。いつかはぜひ日本人選手にも名を刻んでもらいたい。また選手だけではなく、コーチもぜひ挑戦してみてはどうだろうか。来年も同じメンバーで各選手の成長ぶりを見てみたい一方で、新たにどんな選手が加わるのかワクワクする気分もある。

「家族や友人は、とにかく選手たちが海外に行かずにアメリカにいられるということを喜んでいます。自分も将来の選手たちにアメリカでプロとしてやっていけるんだよ、と示せたと思います」(エボニー・ンワネブ選手)、「リーグが終わった後、バレーボールクリニックに行ったらそこで、これから言えると思います。アメリカにだってプロのすごいバレーボールをできるリーグがあるんだよって。若い世代に目標ができたことは、とても大きな事ですよね? そのような目標が今まで欠けていたと思います。こどもたちがアメリカでバレーができるという可能性を持って、両親や兄弟たちがそれを見ることもできるのです。そうしてどんどん広がっていくと思います」(カイリー・マンス選手)というように、ここからどうAUが成長、継続していくか、まずは大きな一歩を踏み出せたと思う。

2021年7月からはラクロスの初シーズンが、8月末にはソフトボールが2シーズン目を迎える。2022年春にはバレーボールの2シーズン目も開催が決まった。選手にもファンにも全く新しい魅力を見せてくれたAU、早くも次のシーズンが待ち遠しい。

■番外編 東京五輪の抱負インタビュー
――間もなく国際シーズンが始まります。東京五輪の抱負を聞かせてください。

アメリカ代表キャプテン、ジョーダン・ラーソン選手:とにかくまたアメリカチームの選手みんなが体育館に集合できることが嬉しいです。チームメイトが元に戻って、それぞれが学んだことを実行するのを見るのが楽しみです。チームのために、それぞれがどう最高に機能するかをずっと練習してきました。今度はそれを試合で見せる時です。それが焦点であり、この夏はたくさんいいことがあると思います。

カーチ・キライ監督:期待という面では、特別に何か付け足すことはあまりありません。去年は本当に少ししか練習ができず、ウォームアップや練習を始めて30分もしたら、ウイルス検査や他の理由で全てが中断されてしまった、そんな状態でした。その中で忍耐を学んだと思います。新たなレベルの忍耐でした。皆で揃って過ごせる時は、1日一緒に練習できることをとても大切にしたいと思います。アメリカチームでの6対6の練習も2019年のW杯以後はできていません。先週やっと4対4で練習できたのですが、それだけで素晴らしいことです。少しずつやっていけばいいと思います。素晴らしい選手たちには感謝の気持ちで一杯ですし、長年そうしてきたようにお互いを大切にしたいと思います。

アメリカ女子は、オリンピックでは北京以降、銀、銀、銅とメダルを取っているだけに、ファンの東京五輪への期待も大きい。AUで打ち合ったジョーダン・ラーソン選手とドミニカのベタニア・デ・ラ・クルス選手は予選グループが分かれたが、決勝リーグで顔合わせがあるだろうか。

Athletes Unlimited公式サイト
(成績の最終順位はleaderboard、ポイントシステムの説明はhow we play)
https://auprosports.com/volleyball/
Athletes Unlimited YouTubeチャンネル(試合の録画あり)
https://www.youtube.com/c/AthletesUnlimited
フェイスブック、インスタグラム、ツイッチ、ツイッター AUProSports

取材:ブラジル在住 唐木田 真里子

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