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コラム

2022-05-06 18:24 追加

アメリカ女子バレープロリーグ、キャプテンのリーダーシップを支えるファシリテイター ジョー 現役を退いたシェイラの談話など

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■キャプテンの力が発揮できるように

ドラフトで分かれた4チームには、それぞれファシリテイターがいる。ここでは、監督やコーチという言葉を使わず、ファシリテイターと呼ぶ。その役割はどの様なものなのか。昨年から2シーズン、ファシリテイターを務めたジョー・トリンゼイ氏に話を聞いてみた。(略歴:アメリカやカナダの女子ナショナルチームのアシスタントコーチやユニバ代表、北中米選手権の監督などを経て、現在はカナダ男子のアシスタントコーチを務める。)

ジョー・トリンゼイ氏、「誰がキャプテンになるかでチームも変わります。OHがキャプテンなら自分を相手の最も強いブロッカーにローテーションを当て、チームメイトの負担を減らします。」 撮影:Athletes Unlimited/Jade Hewitt

――最初にAUの事を聞いた時、どう思いましたか。

ジョー・トリンゼイ(以下、ジョー):興奮しましたね。アメリカには継続したプロリーグがなかったので、アメリカのファンにとってプロシーズンにお気に入りの選手を見るのが難しかったからです。選手自身にとっても挑戦だと思います。今までは1年の半分は海外で過ごさねばならなかったし、彼らの家族にとっても大変なことです。私の妻もヨーロッパで2シーズン過ごしましたが、家からはるか遠くにいるのは難しかったし、それが選手生活を終えた理由のひとつでもあります。ですからアメリカに新しいリーグができると聞いて、本当に興奮しました。

――ファシリテイターの役割を教えて頂けますか。毎週ドラフトで選手が変わるというのは、初めての体験だと思います。普通の監督とは少し違うと思うのですが、ドラフトや練習、試合の時はどのようになさっているのですか。

オンラインドラフト会議。キャプテンのSナターリア・V‐アンダーソン(上左)の第1指名はOPカースタ・ロウ(上右)、「ジョー(上中央)のアナリストとしての情報量は膨大ですごいのよ。」 写真:YouTubeより

ジョー:AUのファシリテイターは大きく2点が違います。まず、選手が毎週変わるので、全ての選手に同じシステムの練習を積み重ねることができません。次に、キャプテンにチームの最終決定権があることです。ドラフトの選手の選択やスタメンの決定、そしてメンバーチェンジなど、キャプテンの同意なしですることはできません。
決定権はキャプテンにありますが、私自身は普通のリーグとあまり違いが無いように思います。ただ、なんといっても十分な練習時間がないので、時にはやりたいと思っても、技術やプレイースタイルを変えることはできません。ドラフトの時は、チーム全体がうまく機能する選択になるように手助けします。練習ではお互いを理解し合うことが大切です。強みを生かし、弱点をカバーし合うことです。技術的なことよりも、戦術に重みを置きます。例えば、一人の選手の技術を伸ばしていくよりも、選手のポジションを正し、他の選手がカバーできるようにします。試合中は、両チームのローテーションを重視します。限られた練習時間では、どのチームもローテーションに弱点が出るので、そこを選手がよく気を付けるようにします。

――選手のメンタルヘルスについてお伺いします。選手が心の不調を感じた時は、どうすべきなのでしょう。選手によっては、チームメイトに知られたくないと思ったり、監督は今まで通りレギュラーで自分を使ってくれるだろうかなど、不安もあると思います。アメリカのナショナルチームや大学では、カウンセラーがチームにいるのですか。心の不調を抱える選手をあなたはどうサポートしますか。

ジョー:それはとても大事な問題です。私はAUで、その週に自分のチームにいなくても、全員を手助けするためにここにいるんだよ、と選手に伝えるよう努力しています。他のファシリテイターもそうですし、タイーバ・ハニーフ・パーク氏(元Vリーグの武富士、パイオニア)はディレクターとしてすべての選手とスタッフの力になってくれます。またAUには特にメンタルヘルスのカウンセラーがいます。面談はプライベートなもので、選手は助けが必要な時に、スタッフや選手に知られることはありません。
カウンセラーがチームにいるかということは、アメリカ全体でとても重要な案件になってきています。多くの大学にもカウンセラーがいますし、年々増えていると思います。アメリカのナショナルチームもこの件はより配慮しています。これは単にバレーボール選手としてではなく、一人の人間としてサポートしていくことが、大切だと思います。

――東京五輪でアメリカ女子は金メダルを獲得しました。その後、何か変化はありましたか。女子バレーの注目度はあがったのでしょうか。

ジョー: そうですね、アメリカ全体で女性のスポーツがより注目されるようになったと思います。現在、高校ではバレーボールがバスケットよりも人気があります。アメリカ女子チームの成功は、ここにこんなに素晴らしい女子選手がいるということを示す手助けをしたと思います。そしてAUのようなプロリーグが、4年に一度の五輪よりも、もっとファンと選手を結びつけるものになるといいと思います。

――AUが今後も長く続いていくには、何が必要ですか。

ジョー:私にとって最も心強いのは、AUがビジネスに長けた人たちによって設立されたことです。アメリカにあった過去のリーグは経営手腕のないバレーボール関係者によるもので、リーグを維持するための初期の十分な投資がありませんでした。しかし、AUは堅実なビジネスの面があり、他にもバスケット、ソフトボール、ラクロスのリーグに投資しています。リーグの成長には時間も必要ですが、きっとうまくいくと思います。私のファシリテイターとしての目標は、できる限りバレーボールの質を高めることで、それにより選手が個性を持ち、厳しい勝負ができると思いますし、ファンもその経験を楽しめます。それができれば、リーグは長く成功するでしょう。私には2歳の娘がいますが……、彼女がいつかプレーする日まで、AUが長く続くといいなと思います。

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