2023-09-23 13:34 追加
女子バレー 苦難のブラジルチーム バレウスカ元北京金メダリスト、シドニー銅メダリストを悼んで トルコ戦直前に届いた突然の訃報
バレウスカ追悼
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9月16日に始まった五輪予選。24カ国が3グループに分かれ、各グループの上位2位、計6チームにパリ五輪の出場権が与えられる。ここまで5連勝の日本は残る2試合、対戦相手はトルコとブラジルの大一番を迎える。日本との対戦前、22日に行われたトルコ対ブラジルは3-0(25-21、29-27、25-19)でトルコが圧倒した。日本以外のグループでは、これまでにタイがポーランドをフルセットで破る、中国がカナダとオランダに連敗するなど、上位陣も残り2試合まだ気が抜けない。
■波に乗るトルコ、不安を抱えたブラジル
7月にネーションズリーグ(以下VNL)で初優勝、続いて9月初めにはヨーロッパ選手権も初制覇し、今年一番波に乗るトルコ。カラクルト、バルガスという強力なスパイカーを擁し、キャプテンのMBエルデンが速い攻撃を仕掛ける。今年に入りバルガスがトルコに帰化したことで、急に強くなったような印象を与えがちだが、2018年以降はVNLのベスト4に常駐している。監督は全員の力と強調する。「たしかにバルガスは強力なスパイカーです。しかしバレーは打つだけじゃない。サーブ、ブロック、レシーブの数々のフォーメーションもある。それが彼女だけではなく、どのポジションの誰もができるというのが全員の団結力、総合力であり、トルコの強さです」。今までは、カラクルトにボールが集中し、試合の終盤バテたり集中力を欠く部分があったが、バルガスが入ったことで分散されどちらにもプラスに働いている。またブラジル戦で見せたように、セッターも含めどのポジションからもブロックで点が取れる。ブロック数でトルコ14本、ブラジル4本と完全にブラジルの攻撃を封じ込めた。
一方ブラジルは不安を抱えたまま大会を迎えた。今年のVNLでは、何人かのけがの回復が遅れ、毎週次々と誰かが追加されるという様な形で、メンバーを固めての練習ができなかったように思う。8月の南米選手権では全勝で優勝したものの、力の差を見て、ブラジルなら勝って当然だろう。Sマクリスがシーズン初めから背中、腰の痛みを抱え、南米選手権は控えのSロベルタがレギュラーとしてトスを上げた。しかし、大会後にギマラエス監督は第3セッターでありVNL第1週だけに参加したナイアーニを追加招集する。マクリスのリハビリと時間の戦いであったが、最終的にマクリスが五輪予選参加を辞退することになった。ナイアーニもセッターとして実力はあるが、やはり五輪出場をかけた様なプレッシャーのある大会には、ここ数年チームをまとめ引っ張ってきたマクリスの存在が不可欠だっただろう。トルコがどんどんプレッシャーをかけてくるのに対し、ブラジルは単調なサーブで、相手を崩しにかかれず、ブロックも不発に終わった。
■ブラジルチームに試合前に届いた訃報
トルコ戦を前に最終チェックのミーティング中に、ブラジル元代表でシドニー五輪で銅、北京五輪で金メダルを獲得したMBバレウスカ・オリベイラの訃報が届いた。享年43歳。(警察の発表では、自殺の可能性が高いと捜査中。)代表から退いた後も、ブラジル国内のスーパーリーグでは2021/22シーズンまで現役だったので、つい昨年引退したばかりである。現在の代表のMBタイーザとは、北京五輪で金を獲得したチームメイト、MBカロルとは昨年までクラブチームで長年対角を組んだ仲だ。つい先日、日本へ出発する前に合宿に激励に来てくれたばかりのそんな身近な存在の急死に、選手だけでなく、監督やスタッフも大きな衝撃を受けた。「耐えがたい悲しみです。だけど、泣くのはトルコ戦の後でいい。
今は試合に集中し、皆で団結する時」とコートに向かうも、「試合前の黙とうで涙をこらえるのがとても辛かった」と、試合後にタイーザが話している。ギマラエス監督も「底なし沼にいる様な深い悲しみです。」と沈痛な面持ちで語り、「もし彼女がここにいたら、自分のために頑張ってほしいと望むだろう。だから残り2試合、最善を尽くします。彼女はすべてのコーチが自分のチームにいて欲しいと思う様な、技術的にも人間性も全てを兼ね備えた選手でした」と賛辞を贈った。
ブラジルチームの悲しみは計り知れない。試合中もキャプテンのガビとタイーザが懸命に皆を引っ張る姿に心打たれた。チームで試
合に出ると決めたならば、最高の力が出せるように声援を送りたい。亡くなったバレウスカの生前の活躍を偲び、心から哀悼の意を表します。
取材:ブラジル在住 唐木田 真里子
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