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ゲームレポート

2014-09-11 12:17 追加

世界のバレー会場から 男子世界選手権編 

第1次ラウンドを終えて

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開会式

開会式

 

ここは本当にバレー会場なのか?

開会式42014年8月30日、ポーランドの首都ワルシャワで行われた「世界選手権」開会式の会場を写した公開画像を見て、度肝を抜かれました。アリーナ、1階席、2階席、3階席、どこを見ても客席に隙間はなくぎっしり。5ヶ月前の発売初日15分で売り切れたというチケットも、実はダフ屋が買占め実際には空席がチラホラ見受けられるのではないか、そんな予想などした自分が恥ずかしくなるくらい、360度人、人、人で埋め尽くされています。しかもユニフォームにマフラーに帽子に国旗と、応援グッズをまとっていない人を探す方が難しいくらいチームカラーに染まり愛国心に溢れています。ポーランドのバレー人気は認識しているつもりでしたが、ここまでの盛り上がりは予想外でした。

開会式に続いて行われた記念すべきオープニングマッチは、地元ポーランドとポーランドリーグ経験者の多いセルビアの対決。アクロバティックなダンサーや、アーティストのエンターテイメントが盛り込まれた開会式のセレモニーで観客のテンションも最高潮に達したところで、いよいよ試合が始まります。背番号順に紹介VTRが流れ、会場内62,000人もの観客の、割れんばかりの拍手を受けながら、レッドカーペットを駆け抜け入場するポーランドとセルビアの選手たち。360度からスポットライトを受ける選手たちは、ハリウッドスターに引けを取らない偉大なスターに見えました。

第1次ラウンド概況
赤白の大観衆が見守る中、セルビアの力を完全に封じ込めポーランドの快勝でスタートした大会、現在は1次ラウンドを終え、24チームから勝ち上がった16チームで熱戦を繰り広げています。勝ち上がったチームを見ると納得できるチームばかりですが、実はその裏には意外な展開がいくつも。大会開始早々、一次ラウンドで波乱は起こっていたのです。

まず開催国ポーランドは見事に国民の期待に応え、ワールドリーグの苦戦を経て強豪へと生まれ変わったかのような戦いぶり。第1ラウンド5戦はセットを1つを落としたのみで、それ以外はストレート勝利。ブラジルもロシアも達成できなかった勝ち点満点の15点で、セルビア(12点)、アルゼンチン(9点)、オーストラリア(5点)と共にプールAから2次ラウンドへ進出しました。

負傷したブルーノ・レゼンデ

負傷したブルーノ・レゼンデ

プールBのブラジルはセッターレゼンデの怪我に見舞われながらも、順当に1位(勝ち点14)で通過。ワールドリーグ期間温存させていた選手が揃ったドイツはブラジル戦以外、3-0または3-1で3ポイントずつを獲得し、勝ち点12、2位で2次ラウンドへ進みました。アジア予選で日本が出場権を奪われた韓国(勝ち点4)は、残念ながらここで敗退。フィンランド(勝ち点8)、キューバ(勝ち点6)が2次へと駒を進めました。

故障者が多く不完全な力で挑むことになったプールCのロシアは、ブルガリアとフルセットに持ち込まれながらも勝利は簡単には離しません。低迷していたように見えたブルガリアもロシアを追い込むまでに回復しましたが、カナダにはフルセット負けという結果。そのカナダは格下にはセットを獲らせずストレート勝ちで大健闘。ロシア(勝ち点14)、カナダ(勝ち点11)、ブルガリア(勝ち点10)に加え、中国も勝ち点6で2次ラウンドへ進んでいます。

今大会、大波乱が巻き起こったのがプールD。イタリア、アメリカ、イラン、フランス、プエルトリコ、ベルギーと、名前を見ただけでも強豪揃いの死のプール。そこで1位通過したのが、ワールドリーグ優勝のアメリカでも世界ランキング3位のイタリアでも急成長のイランでもなく、フランスだったのですから全く予想外の結果です。そのフランスが唯一負けた相手イタリアも、アメリカ、イラン、さらにはプエルトリコにまで敗北を喫し、2次進出が危ぶまれる自体に。WL好調に見えたアメリカも、イラン、フランスに負け、ベルギーにフルセット。予想できない混戦が続いた結果、2次ラウンドへの進出を決めたのは、フランス(勝ち点12)、イラン(勝ち点11)、アメリカ(勝ち点9)、イタリア(勝ち点5)となりました。

ウッチでのポルスカ

熱狂的なポーランドの観客

熱狂的なポーランドの観客

2日間のOFFを挟み開始した2次ラウンド、9月10日初日のプールEウッチの会場で、遂に赤白のポルスカファンの威力を目の当たりにしました。国歌のアカペラでの大合唱、相手サーブ時の耳を塞ぎたくなるほどの特大ブーイング、幾度となく沸き起こる拍手と「ポルスカ!」の掛け声。対戦相手にこの上ないアウェイ感を与え、精神状態をかき乱してきたことがここへ来てよく分かります。本来の力を出し切れずコートを後にするしかなかった対戦相手たちですが、それも当然のように思えました。

ポーランドvsアメリカ戦

ポーランドvsアメリカ戦

この状況でどれだけコートの中に集中できるかが、勝敗の分かれ目となるポーランド戦。第2ラウンド、ポーランドの初戦の相手アメリカからはその集中力が見られ、初めてポーランドを追い詰めることに成功しました。しかし例え劣勢でも応援の力を緩めない地元観客たち。戦術を分析するバレー通の集まりというよりは、バレーがよく分からなくても応援することに喜びを感じている人々という感じです。選手の名前を特に叫ぶ人を見かけないところを見ると、名前もよく分からず観戦している可能性がなきにしもあらず。故にミスをした際落胆の声は漏れても、そこを指摘するまでには至らず劣勢でも前向きな応援が続くのでした。

そんなポーランドの応援のスタイルを1試合を通して観察すると、一糸乱れぬ応援かと思いきや、個人個人が思うがまま自由奔放。終始全力というわけでもなく疲れれば気を抜く観客もおり、キャラクターが現れれば試合そっちのけで駆け寄る。もちろん常に全力の観客も大勢います。事あるごとに立ち上がったり、叫んだり、連続でジャンプしたり。その自由な観客の動きを要所要所でまとめているのが、男性DJの声でした。

ひとたびDJが拍手を煽ると皆が従います。拍手だけでなくアカペラでの合唱にウエーブ、やらされている感は一切なく自発的にノリノリです。若者はもちろん、ちびっ子もおじいちゃんおばあちゃんも、一人観戦の人まで拒む様子を見せません。穏やかな国民性の中に潜む情熱を操り、この大会を見事に盛り上げていました。

金メダルの行方
波乱の第1ラウンドを終え、第2ラウンドが始まった今、金メダル候補は闇の中に包まれています。遂にポーランドにも黒星が与えられ、ますます想像が難しくなりました。全く予想できない結果が待っているようにも思える今回、最後に微笑むのは一体どのチームなのでしょう。優勝候補のロシア、ブラジルのどちらか?それとも、国民の声援に応えるポーランド?はたまた、ここから一気に調子を上げてくる別のチームなのか・・・。

ポーランド代表監督・アンティガが雑誌の表紙を飾り、プレイボーイの横に並ぶ

ポーランド代表監督・アンティガが雑誌の表紙を飾り、プレイボーイの横に並ぶ

4年に一度開催される最も出場チームの多い国際大会「世界選手権大会」。街ではバレー映画が放映されたり、アンティガ監督やヴィニャルスキが雑誌の表紙を飾ったり、記念切手が発売されたり、バレーを愛するポーランド国民だからこそ過大な演出に負けることなく、自らの手で大会をしっかり盛り上げられています。もしかすると、これがバレーをメジャーなースポーツにしたいと願う、各国の理想像なのではないでしょうか・・・。国民性の違いはありますが、世界のバレーを発展させるのに必要な要素がこの会場には詰まっているように思えるのでした。

文責:宮崎治美
写真:宮﨑治美、FIVB

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