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ゲームレポート

2014-09-18 17:16 追加

全日本男子ブラジル遠征レポ

ブラジル遠征レポート

全日本代表 男子

ブラジルキリンとの集合写真

ブラジルキリンとの集合写真

アジア大会のために韓国入りした全日本男子。先月行われたブラジル遠征についてのレポートをお送りする。

■歓迎! 全日本男子

ブラジルで人気のスポーツといえば、もちろんサッカー。そしてそれに続くのが、バレーボールにF1(F1は近年、ブラジル人レーサーの活躍がいまひとつで盛り上がりに欠けているが……)。あとは、バスケットやハンドボール、テニスも人気がある。

全日本男子チームがフランス、チェコに続きブラジルで4つのクラブチームと親善試合を行った。ブラジルのスーパーリーグは、今年は世界選手権後の10月末に開幕予定で、今は前哨戦といえる州選手権やクラブチーム同士の強化試合、またアメリカへ大学チームとの対戦に遠征するなど、リーグに向けレベルアップを図っている時期だ。その中で、日本チームの来伯は大型、強打といった特徴ではない、普段馴染みのないスタイルのチームとの対戦ということで、相手チームにとってもファンにとっても楽しみな対戦となった。

試合の詳細は既に協会のサイトに出ているので、相手チームのコメントや観戦した第4戦を中心に紹介したい。

■懐かしいVリーグの仲間との再会

新旧パナソニック勢で記念写真

新旧パナソニック勢で記念写真

越川主将とユニフォームを交換したダンチ。地元のファンと

越川主将とユニフォームを交換したダンチ。地元のファンと

初戦のフンビッキ/タウバテ(Funvic /Taubate)はスーパーリーグで昨季10位に終わり、今年、大型補強を行い代表チームの4人(世界選手権出場中)をはじめ、ダンチ、チアゴ(元パナソニック)や強烈なサーブのロレーナなどがいる。結果は4セットマッチで2-2の引き分け。

「去年パナソニックで一緒に戦った監督や仲間がいて嬉しかった。セッターのフカツはまだまだ伸びる選手。次の対戦が楽しみ」とダンチはじめパナソニック組で記念写真をパチリ。

 

■リカルドが設立し、キャプテンを務めるジオベール

トスを上げるアテネ金メダリストのリカルド。プロとしてスタートをきった思い出の地マリンガ市に、チームを設立。キャプテンかつ経営の責任者でもある。チームの資金集めや市への協力要請なども自ら行っている

トスを上げるアテネ金メダリストのリカルド。プロとしてスタートをきった思い出の地マリンガ市に、チームを設立。キャプテンかつ経営の責任者でもある。チームの資金集めや市への協力要請なども自ら行っている

2、3戦目はジオベール/マリンガ(Ziober /Maringa)でリーグは8位。サントリーに加入したセッターの島田選手が所属したチームだ。パラナ州の内陸にあるマリンガ市はじめ近郊のアサイ市(日本語の朝日からきている)、ロンドリーナ市には日系人も多い。またここ10年余りパラナ州にスーパーリーグのチームがなかったことから、熱烈な地元ファンが多く、日本戦が待ちに待った今シーズン初のホームでの試合となった。元ブラジル代表セッターのリカルドが設立したチームで、リバウド(本名ロドリーゴ、元堺)も今年から加入。「初の試合ということでやや堅くなり、リズムが悪かった」というジオベール/マリンガに対して、日本は集中力があり、2戦2勝とした。

ブラジルではほとんどの選手が1年契約で、シーズンが終わると新たな契約に入る。チームの半分以上もメンバーが替わる時もあり、新シーズンには全く別チームの様になる場合もある。選手のポイント制のランキングがあり、最高7ポイントの選手は1チームにつき男子は3人、女子は2人までというような決まりがある。しかし、やはりスポンサーの財力のあるチームが有力選手の補強ができる。ここまで対戦したチームも昨季とはがらりとメンバーが替わっており、監督にとって、新戦力を試すうえで、日本戦は貴重な経験となった。

■34-32で見せた日本の意地

元代表のマルセーロ

元代表のマルセーロ

4戦目はリーグ2

SESI戦の清水。ブロックを打ち抜く

SESI戦の清水。ブロックを打ち抜く

位のセージ‐サンパウロ(SESI-SP)。元代表のセッターのマルセーロ、オポジットのテオ(元サントリー)そしてリベロのセルジオらのベテランがおり、ブラジル代表3人を欠くとはいえあなどれない。試合前のキャプテンの挨拶では、マルセーロが越川選手の肩を抱き、再会を喜んでいた。

試合のあったモジダスクルーゼス市はスーパーリーグのチームがなく、また2002年の世界選手権前にブラジル対日本の練習試合を行って以来のバレーボールの国際試合となり、試合開始2時間前には開門を待つ人が列を作り、途中からは満員立ち見も出る盛況となった。

セージ‐サンパウロのパシェコ監督は「試合前にあえて細かい指示を出さず、対戦データのないチームに対し、試合中に選手自身が早く相手の特徴を読み、どう対応できるか試したかった」というように、セッターのマルセーロがうまくチームをリードし、MBのリアドが日本の攻撃を要所で読んでいた。日本がミスを出すと、そこを逃さずにつけこみ連続得点を奪っていく点はさすがと言わざるを得ない。

盛り上がったのは第2セット。序盤はリズムをつかんだものの、中盤からは相手のトス回しに押され、日本のサービスエースで追い上げをかける。ジュースになり、あと1点が取れないが、相手に連続得点を許さない粘りを見せる。歓声とため息、ブーイングとボルテージが上がる中、キャプテンの越川選手が意地を見せ34-32となり、大歓声に包まれた。「今日は新ユニフォームのお披露目で負けるわけにはいかなかった」というセージ‐サンパウロが残る2セットを強力なスパイクで押し切り、日本は1-3で敗れた。

ヨーロッパから時差、ブラジルでの移動、連戦で疲れが出ていたと思うが、世界選手権を3週間戦い抜くと思えば、体力強化も重要だ。そしてまだまだ日本はチーム全体で相手に与えるプレッシャーが足りない。ミスをしても下を向くことなく、流れの悪い時にもっとチーム内で声を出し合い、気迫で押していってほしい。

「日本はトランジションのレベルをあげるよう模索しているように思えました。伝統的にレシーブの力を持っているのですから、この対戦がさらに上を目指すことにつながったと思います」というパシェコ監督はリーグ優勝7回を誇る名監督だ。そしてサントリーのジルソン新監督の恩師であり、ジャイミ(トレーナー)の親友である。ジルソンが彼から学んだ手法でどうサントリーを指揮するのか楽しみだ。

ジョン・パウロのスパイク

ジョン・パウロのスパイク

元サントリーのウォレスと

元サントリーのウォレスと

最後はリーグ3位のブラジル キリン(Volei Brasil Kirin)。世界1の強さを誇るブラジルといえど、クラブチームのスポンサー離れは深刻で、昨年、製薬会社が撤退したのち、日系のBrasil Kirinがスポンサーについた。ジョン・パウロ(元パナソニック)、ウォレス(元サントリー)、215cmのグスターボと高さのあるチームだ。日本は序盤、中盤は競り合うことができたが、後半にブロックやミスで失点につながり、4セットマッチで1-3で敗れた。

長年ブラジル代表のMBだったアンドレ・エレーは先日、現役生活を引退し、コーチに就任したばかり。「ホームで国際試合ができてとても嬉しいです。自分が戦った日本代表とはずいぶんメンバーが変わっていますが、この遠征を機にまだ伸びるでしょう。次はリオ五輪の出場権を取って欲しい」とエールを送った。

■安くて熱いバレー観戦

ブラジルのスーパーリーグなどの国内試合では決勝以外は、ほぼ入場無料だ。チームによって10レアル(約450円、学生・60歳以上半額)程度の入場料を取る時もある。Wリーグなどの国際試合は30~60レアル(約1400~2800円、学生・60歳以上半額)。またお金の代わりに、1㎏の食料品をチケットと交換する場合もある。日本戦も初戦は無料、あとは10レアルもしくは食料品寄付だった。皆が持ち寄った米や缶詰、油などを老人ホームや病院、低所得者の支援団体などに寄付する。

kirin-ouendan-sサッカーの試合とは違ってファンが乱闘になることはないが、応援は熱い。男女の客は半々ぐらい。チームの応援Tシャツやスティックバルーンが配られ、そのシャツを手で振り回したり、足を踏みならしたり、飛び跳ねたりと、応援する側も体力がいる(!?)。DJや音楽が入ると踊りながら見ている女性も多い。相手チームへのブーイングもすごい。と同時に、自分のひいきのチームに対しても厳しい。単純なミスなどは「あ~」と大きなため息、「しっかりボール見ろ」、「メンバーチェンジしろ」とヤジが飛ぶこともある。この中で、選手は責任感を持ち、プレッシャーを乗り越える術を学んでいく。日本は国際大会のホストになることが多いが、アウェイの雰囲気にのまれない心構えも大切だ。

4戦目の試合が行われたモジダスクルーゼス市はスポーツの誘致、協力に積極的であり、サッカーW杯ではベルギーチームの拠点だった。日本戦の会場だったクルビ・デ・カンポ・モジダスクルーゼス(Clube de Campo Mogi das Cruzes)では、来年、日本を含め4ヶ国対抗戦を計画中だとか……。もし実現すれば、また一回り成長するであろう日本チームを見るのが楽しみだ。

文責:唐木田真里子
写真:Jonas Barbetta/Tuddo Comunicacao、Ziober /Mainga、SESI-SP、Volei Brasil Kirin、Roberta

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