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ゲームレポート

2015-05-14 17:23 追加

女子世界クラブ選手権2015レポート

久光製薬が出場したスイス大会ゲームレポート

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世界クラブ選手権に出場した監督たち。壮観だ

世界クラブ選手権に出場したチームの監督たち。壮観だ

バレーボール世界クラブ選手権女子大会2015は5月6日から10日まで、昨年と同様スイス、チューリッヒのザールシュポルトハレを会場として行われた。参加したのは欧州覇者のエグザージュバシュ・ヴィトラ・イスタンブール(トルコ)、南米覇者のレクソーナ・アデス(ブラジル)、アジア代表の久光製薬スプリングス、開催地国代表のヴォレロ・チューリッヒ(スイス)、そしてワイルドカードのディナモ・クラスノダール(ロシア)、ミラドール(ドミニカ共和国)の6チームである。この6チームが2つのグループに分かれて予選ラウンドを戦い、上位2チームが準決勝に進出する。

予選ラウンドの組み合わせは、例年開催地枠のヴォレロがセミファイナルに進出しやすいように配慮されており、アジア代表として参戦するチームは相対的に強豪チームが集まるグループに入ることを余儀なくされる。昨年も久光製薬はディナモ・カザン、オザスコという、同大会の優勝、準優勝チームと同組となり、予選では厳しい戦いを強いられた。今大会も久光製薬は優勝候補の筆頭である欧州覇者と、ワイルドカードとはいえ、ロシアリーグを代表する強豪クラブとして知られるクラスノダールと同じ組に入ることとなった。

会場となった体育館

会場となったザールシュポルトハレ

筆者が会場であるザールシュポルトハレに到着したのは5月6日の午後6時。今大会の開幕戦である久光製薬対エグザージュバシュは試合開始が5時半なので第1セットの途中で会場入りする心積りだった。ところが会場に入ってみると、既に試合は第2セットに入っており、会場奥の電光掲示板には第1セットは25対12という一方的な結果で相手方が勝利したことが示されていた。やはり世界からスター選手をかき集め、欧州チャンピオンズリーグを圧倒的な強さで制したエグザージュバシュは別格なのか?

久光製薬スプリングスは、今大会に並々ならぬ覚悟で臨んでいた。本大会は表彰台に上ることを目指し、大会直前には今期イタリアセリエA1部で圧倒的強さを誇るノヴァーラや将来の代表候補を集め、強化合宿を行いながらセリエA2部に参戦するクラブ・イタリアとの親善試合を行うなど、入念な準備を行った上で、開催地であるチューリッヒに乗り込んできたはずである。

EczacibasiVitrAIstanbulcaptainEsraGumusKiricileftspikesagainstMizutaandMihajlovicHIS -sしかしコートの上の選手たちに悲愴感は全く感じられなかった。エクザージュバシュはドイツ代表のフュルスト、クロアチア代表のポリャーク、ドミニカ代表のデラクルス、アメリカ代表のラーソンにトルコ代表のネスリハンと、高い身体能力を誇り、国際大会での実績も豊富な選手がずらりと名前を連ねている。リベロを除いた平均身長は187センチと久光製薬で最も身長の高い岩坂選手と同じである。そのスター軍団の繰り出す攻撃は高く、パワーにあふれ、守備は献身的でどこにも穴が見当たらないように思える。

しかし第2セットになると久光製薬は徐々に本来のリズムを取り戻し始め、ボールがなかなかコートに落ちなくなる。これは国際大会で日本のチームが勝利する時の一つの徴候だ。さらにセット後半になると、エグザージュバシュの誇るトッププレイヤーたちが明らかに久光製薬のブロックを嫌がるような打ち方をし始める。一流のスパイカーでも常にベストのタイミングで打撃ができるわけではない。身長が低くても、覚悟を決めて早いタイミングで助走に入り、しっかりと止めにかかれば、やはりそれはプレッシャーとなり、ミスを誘うのである。石井とミハイロビッチが次々とスパイクを決め、第2セットはタイブレークから久光製薬が勝利した。

ここから流れは明らかに久光製薬に傾く。エグザージュバシュも必死の巻き返しを図り、セットは2対2のイーブンで最終セットにもつれ込む。しかし会場奥の電光掲示板に大写しになったエグザージュバシュの選手たちは顔面蒼白で、動揺が明らかである。アジア代表相手に劣勢に立たされるなど、誇り高い彼女たちは全く予想もしていなかったのだろう。

第5セットは久光製薬の選手たちは実に気持ちよさそうに次々とスパイクを打ちこんでいった。それに対しエグザージュバシュは集中力を切らしたのかボールのハンドリングがおぼつかなくなり、スパイクも思い切りを欠いて次々に拾われてゆく。結果このセットは15対11で決着し、久光製薬は記念すべき世界クラブ選手権初勝利を挙げることになった。

勝利後の笑顔

勝利後の笑顔

会場は体格差が歴然とした日本のチームの大健闘に大きな賞賛の拍手が送られ、筆者もFIVBやスイス協会の役員から、「こんなすごい試合見たことない」「今シーズンヨーロッパで行われた試合の中で最もエクセレントな試合だった」など、社交辞令もあるだろうが、最大の賛辞を受けた。昨年も久光製薬はこの大会に進出したが、予選ラウンドは1セットを獲得したのみで1勝することもできずに予選での敗退となった。それがクラブチームでの世界進出を志す久光製薬にとって世界のドアをノックした大会だったとすれば、この勝利はいわば世界のドアを開けた瞬間だったといえるだろう。

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