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2015-05-14 17:23 追加

女子世界クラブ選手権2015レポート

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現地でのバースデーを祝ってもらった石井優希

現地でのバースデーを祝ってもらった石井優希

そして2日後の第2試合。対戦相手はワイルドカードで進出したディナモ・クラスノダール(ロシア)。ロシア代表のコシェレワ、ブラジル代表のガライ、元キューバ代表のカルデロンなどを擁する強豪チームである。今期はロシアリーグでは下位に甘んじているが、欧州クラブリーグの2部に相当する欧州カップの優勝チームである。久光製薬が親善試合を行ったノヴァーラを予選ラウンドで破っており、ワイルドカードだからと言って油断することは全くできない。しかし、7日に行われたエグザージュバシュとの対戦では守備が不安定で本来の攻撃力が発揮できず、一方的に敗れるという結果となり、フィジカルには恵まれているがいったん崩れるともろいという印象が残った。

今大会でのクラスノダールのプレーに全く凄みは感じられない。「ひょっとして表彰台の真ん中に登れるのではないか?」そう感じたのは筆者だけではなかったはずである。

第1セットの久光製薬は初戦ほどのびのびとした動きが見られないが、クラスノダールも相変わらず守備が安定せず、久光製薬がすんなりと獲得した。しかしここで何か嫌な感じが頭をよぎる。何か勝ち方がよくないのである。例えばサーブミスが少ない。一見これはよいことにようにも思えるが、攻めていない、勝負を仕掛けていない、それでも相手が自滅してたまたま勝ったという感じなのである。のびのびと躍動し、相手にプレッシャーをかけ、小柄な体が大きく見え、逞しくコートに映えていた久光製薬の選手たちがなにかしら、勝負を恐れているような、ひ弱さを身に纏い始めている。

強烈な破壊力を誇るガライ

強烈な破壊力を誇るガライ

逆にクラスノダールは第2セットから、エースのコシェレワの表情に殺気が漲り、十分な助走から、相手の戦意を喪失させようとでもするかのように、受けるものを叩きのめすような気迫を込めてスパイクを打ち始め、ガライもこれに続いた。ここから久光製薬は堤防が決壊したかのように守備が不安定になって苦し紛れのトス回しが多くなり、終始相手方にリードを許すことになった。選手たちの表情は引きつり、足が止まってこぼれ球を拾えなくなり、お見合いまでしてしまうという状況で試合展開は一方的な劣勢に立たされることになった。

必死に防戦し、点差を詰める場面も何度かあったが、その度に流れを相手に渡すまいとテンションを上げるコシェレワとガライに反撃の芽を摘み取られ、久光製薬は1対3で敗戦。プールBは3チームが1勝1敗で並ぶ激戦となったが、久光製薬は勝ち点で3位となり、またしても世界クラブ選手権の挑戦は予選ラウンドで終了することとなった。そしてまた今年の大会においても、久光製薬が予選ラウンドで対戦したチームがファイナルに進出し、優勝と準優勝チームとなった。

欧州覇者を倒した初日の勝利と敗退が決定した予選ラウンド最終日、まさに天国と地獄である。

なぜこのようなことになったのか? 恐らく選手とチーム関係者は未だにこの問いが浮かんでは消え、割り切れない思いに苛まれていることだろう。クラスノダールはエグザージュバシュに比べて攻撃、守備のいずれにおいても明らかに見劣りし、今大会のMVPとなったラーソンに全く仕事をさせなかった久光製薬が一方的に敗れる相手ではなかった。久光製薬にとっては新たな歴史を作る絶好のチャンスだった。しかしそれでも思うような結果が出ないのが勝負の世界である。

やはり世界は簡単ではない。ナショナルチームでもそうだが、クラブチームの場合は世界中からスター選手を補強しているので、世界の壁はさらに高く、厚いということをまざまざと思い知らされたのが今大会である。高過ぎる授業料だが、久光製薬の選手とスタッフは「単独クラブで世界を取る」ために、技術とフィジカル以外にとてつもなく重要なものがあることを学んだはずである。

今回の結果をさらに上回り、日本と世界のクラブバレーに新たな歴史を書き込む日が必ず近い将来にやってくる。そう言い切れるだけの戦いを彼女たちは我々日本人だけではなく、世界に対しても示してくれた。久光製薬の挑戦はこれからも続く。我々を熱くしてくれるその頑張りに感謝しながら、確実に前進を続ける姿を賞賛しながら、今後の飛躍と成功を心から願いながら、その歩みを見守って行きたいと思う。

文責:佐藤直司
写真:FIVB

 

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