2025-01-08 16:46 追加
日本の守護神も認めた「1枚の写真」 僕もこの写真、大好きです
男子バレーボール日本代表ムックの紹介
全日本代表 男子
スポルティーバ紙ムックの取材で山本智大(大阪ブルテオン)にインタビューしたときに、別の出版社から出した「パリ五輪激登録」を持参した。どうしても彼に見てもらいたい写真があったからだ。
パリ五輪激闘録は、筆者がまだパリに滞在しているときにオファーを頂いた。筆者は男子日本がメダルを取ってくれると信じていたので、閉会式のあとまで滞在を確保していた。男子日本代表がまさかの大逆転で敗退して数日後にパリ五輪予選、VNL総括のムックをオファーしていただいた編集者から連絡があり、パリ五輪速報号を出したいとのこと。
ただ、五輪は取材パスが非常に厳しく、私もチケット観戦だったし、バレマガのカメラマンは誰も現地に来ていない。このためこれまでと異なり、写真は基本的にフォトエージェンシーのものを使って記事を書くことになった。
これまでのムックもそうだったが、あらかたは編集者さんの方でセレクトしてもらったものをこちらで補完した。
ただ、やはりバレーをずっと見てムックをたくさん作ってきた人間とはだいぶ写真のセレクトの方向性が違っており、弊誌のカメラマンの手も借りて、かなり大幅に写真を入れ替えた。難しかったのは、フォトエージェンシーの写真であっても、提供元によっては使えない物も結構あった。こちらが「これはいい!」と選んだ写真はほとんどが「使えない」ものだった。それがセレクトしたあとにしかわからないのもかなりフラストレーションが溜まり、しかし少しでもいいものを作りたいため、カメラマンさんと私とスタッフTさんでセレクトとテキストを書くことを続けた。
普通は編集がライターをせっつくものなのだが、今回は私も編集作業にかなり力を入れたので、進行役が曖昧になり、編集さんがなかなか返信をしなくなった。このためフランスから国際電話で編集さんに電話をかけたりした。
帰国のエールフランスの中でも確認を続けた。エールフランスの無料Wi-Fiだとテキストしか送れない。そのため日本にいるスタッフTさんに確認事項をラインのテキストで送り、確認してもらって返信してもらう。ラインのアプリ本文にはその返信されたテキストは表示されないが、ロック画面にのみ表示される。それをみてまた私から指示をテキストで送る。そういった綱渡りをして、本書は出来上がった。
びっくりしたのは、前のムックでもそうだったが、大塚達宣の扱いが非常に小さかったことだ。アメリカ戦ですら1枚も写真がなかった。何度も何度も「この試合は大塚がキーマンです。大塚の写真を入れてください」とお願いしてもスルーされ続け、こちらも頭にきてフランスから国際電話をかけた。それでようやくアメリカ戦の試合レポートのページに大塚の写真も掲載されることになった。それでも一番大きく使われたのは西田の写真で、そこはもうデザイン的に動かせないという。まあそれでも2番めに大きい扱いならいいということで妥協した。
もう一つはアメリカ戦で連続ドシャットを食らった石川が呆然とコートに崩れ落ちそうになっているところをリベロの山本智大が肩を抱いて励ましている写真。これは絶対に入れてほしいと注文した。現地で見ていてもこのシーンはとても印象的だった。石川があんな絶望的な顔をしたところを私はこれまで見たことがない。リオ五輪OQT敗退のときもあんな顔はしていなかった。あのままくずおれたままだったら、イタリア戦はもっと悲惨なことになっただろう。そこにすっと駆け寄って笑顔で肩を抱いたのが山本で、それができるからこそ山本もこの五輪代表に必要なピースだったのだと痛感した。
山本のインタビューのときにひとしきり話を聞いてからその写真を彼に見せようと思ったが、この写真はアメリカ戦のレポートのところではなく石川のページのところにあったため、最初はなかなか見つけられなかった。焦ってより頭が真っ白になったが、山本は辛抱強く待ってくれたので、目的の写真を見つけ出した。そして指し示すと山本の表情がぱっと明るくなった。
「僕もこの写真、大好きです。この場面、すごくよく覚えています」
よかった。選手の思いと記事が一致していた。そして山本は「アメリカ戦のキーマンは間違いなく達宣ですよ」と断言してくれた。
編集者とデザイナーに国際電話をかけてまでゴリ押しした甲斐があった。こういうムックはただ適当にそれっぽい写真を並べただけでは絶対に駄目だと私は思っている。ページをめくるたびにあのときの悔しさ、ワクワクした気持ち、高まった鼓動、それを再体験できるような写真とテキストでなければ。
そしてそれはある程度担保できたと思う。
発売前に「チラ見せ」として数枚写真を告知ページに出した。先程の石川の肩を抱く山本や、ガラッシがハグする高橋藍、母と抱き合って泣く高橋藍など。すぐさま後続の速報号に同じ写真が取り入れられた。うーん、やっぱりチラ見せは後続の速報号の発売後に出したほうがよかったかな…と思ったが、まあ内容的には全試合を現地で見た私のほうが全体を把握できていると自分に言い聞かせ、電波社の「パリ五輪激闘録」を送り出した。
集英社スポルティーバの紙ムックはいろいろな経緯があったが、とりあえず私にも一部は参加することができた。(前号についてはほぼ参加させてもらえなかった)。大塚達宣、山本智大、富田将馬のインタビュー、そしてスタッフTさんが山内晶大のインタビューと次世代の期待の選手たちを担当。
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コスミック出版さんと組んだ最初の本はムックには珍しく重版となった。パリ五輪予選、出場権を獲得したワールドカップの速報号だ。
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VNL総括号も自分的にはかなり頑張ったのだが、告知する余裕がなかったせいかあまり反応がなかった。実はこのムックには石川祐希、高橋藍の高校時代の写真やイタリアセリエAでのプレー写真、大学でのプレー写真、高橋藍のイタリアでのオフの写真などかなり貴重な写真を散りばめてある。石川祐希については最初にイタリアでプレーしたモデナでの写真もある。この年モデナまで取材にいった日本人記者は現地のNHKやフジテレビ以外は私だけなので、本当にレアな写真なのだ。髪型も角刈りぽく、「どうして髪型を変えたの?」と当時聞いたところ「イタリアの美容院はこっちのリクエストを全然聞いてくれないんですよ」と口をとがらせていた。その後は日本人がいる美容院に通っているようなのでこの角刈りの石川もかなりレアな写真である。
2024年のVNLが始まる前の沖縄合宿も取材しており、インタビューカットも練習写真も豊富にある。また、B代表の親善試合の取材も岩手まで行って、大宅真樹、高梨健太、高橋慶帆、山本龍、仲本賢優、新井雄大らの日の丸ユニ写真も収録している。本当に貴重なムックなのだが、制作もかなり大急ぎでやり、そのままパリに行ってしまったのでほとんど告知を行うことができなかった。VNLのメダル写真もあるので、ぜひ今からでも手にとって見てほしい。
バレーボール日本代表 ネーションズリーグ総集編 そしてパリ五輪へ!(石川祐希・髙橋藍 高校生、イタリアリーグのレア写真、沖縄合宿、B代表親善試合写真収録)
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