2016-04-15 18:39 追加
男子V・プレミアリーグ決勝・豊田合成vsパナソニック
2015/16シーズンファイナルゲームレポート
SV男子
Vプレミアリーグ男子ファイナルはファイナル6首位通過の豊田合成トレフェルサとファイナル6で3位からファイナル3でフルセットの上勝ち上がり進出したパナソニックパンサーズとの対戦となり、3(18-25 25-18 25-23 23-25 15-8)2で豊田合成が創部以来初優勝を飾りました。
豊田合成は天皇杯決勝のレポートのチーム紹介でも触れたとおり、攻撃面はOPのイゴール選手が中心で全スパイクの4割~5割強が集まります。クリスティアンソン監督に鍛えられた守備は規律が非常にとれています。この点は天皇杯以降も変わりませんでした。
パナソニックは豊田合成のイゴール選手ほどではありませんが攻撃面はOP清水選手が中心です。MBの打数は少なめです。守備面は豊田合成に比べると個人の判断が入る印象です。
ローテーションは豊田合成は第5セット以外はサーブの一番強いイゴール選手を最初のサーブにし回数を増やす意図が見えました。
一方のパナソニックは今シーズン決まった形のローテーションはあまりないようで、この試合はサーブで始まる第2セット、4セットはダンチ選手が最初のサーブでしたが、第1、第5セットは最初のサーブをダンチ選手にするためには回しておらず白澤選手が最初のサーブでした。第3セットは回していましたが、これは清水選手がフロントライトから始まるローテで、イゴール選手のサーブに対して4人レシーブができるようにした可能性があります。
攻撃面で豊田合成は普段より少し多めにイゴール選手に集めていました(58.9%)。またMBの攻撃は11.1%と普段の試合の16%程度に比べるとかなり少ない打数でした。サイドの選手は高松選手(と交代した山田選手)より白岩選手の割合が少なく、これは普段どおりの配分といえると思います。元々バックアタックはイゴール選手のみといっていいので4枚の攻撃はなく、少しでも崩れてしまうと2枚や1枚での攻撃になってしまうケースが見られました。
パナソニックはMBの攻撃が16.2%と普段の13%程度より多い結果となりました。後半のセットに多くなった印象です。清水選手の割合は42.3%と少し多めになりました。スパイクの失点(被ブロックを除く)が13%と普段6%の倍以上もありかなり多い結果となりました。
守備面は豊田合成、パナソニックともにバンチの配置からリードブロックを主として行っていました。パナソニックの方が豊田合成よりファーストタッチの返球によりジリジリと動くタイプのゲスブロックを行っている印象でした。豊田合成のほうが我慢をできていた印象です。
各セットを振り返ります。
第1セットは前半は拮抗した展開でサービスエースやブロックなどで単発のブレイクはありましたが連続はなく点差が無い状態が続きました。中盤にパナソニックが相手のスパイクミス、ブロックによりつけたリードを保ち、終盤に連続サービスエースなどでたたみかけ一気にセットを取りました。
第2セットは前半パナソニックはつなぎの細かいミスなどでラリーで失点しました。中盤ブロックやワンタッチからのトランジションアタックなどでブレイクもするを豊田合成もイゴール選手のサービスエースなどで譲らずなかなか差がつまらない状態に。パナソニックは終盤もスパイクミスでラリーを取りきれない場面があり、豊田合成がリードを広げてセットを取りました。
第3セットは前半はイゴール選手のサービスエースで先行したリードを豊田合成がキープし続けましたが、中盤パナソニックが追いつき、競り合いが続きました。終盤パナソニックが逆転する場面もありましたが、長いラリーをイゴール選手の決定力で制した豊田合成が再度逆転しセットを取りきりました。
第4セットは前半豊田合成の連続スパイクミス、ブロックによりパナソニックがリードする展開に。中盤イゴール選手のスパイクをブロックするなどリードを広げましたが、豊田合成がその後ブロックやパナソニックのスパイクミスなどで追いつきました。終盤ブロックやイゴール選手のサービスエースで豊田合成が逆転をし、そのままいくかと思われましたが今度はパナソニックのブロックや豊田合成のスパイクミスにより再逆転。最後はこのセットを象徴するイゴール選手のスパイクをブロックし、パナソニックが取りました。
第5セットは前半、ブロックポイントや相手のスパイクミスで豊田合成がリードをしました。中盤はお互いにブロックが決まりブレイク合戦の模様となり豊田合成がリードを保ち続けます。その後もブロックやブロックワンタッチからのトランジションアタック決定などで豊田合成がリードを広げ勝利をしました。
パナソニックは第1セット終盤に連続サービスエースやブロックなどで一気にセットを取り、有利な形で試合を進めるかと思われましたがその後が続きませんでした。守備面ではMBにコミットブロックで対応する場面は少なく、2枚ブロックを揃え、試合終盤になるにつれイゴール選手のスパイクをブロックする場面が増えたのですが、それ以上に競り合いの場面でスパイクミスやラリー中の記録に残らないミスがあり主導権を取りきることができませんでした。第5セットは清水選手が足がつるアクシデントで打点が低くなり、被ブロック本数が増え不利な展開に。池田選手に交代しましたが流れは変わらず、最後はこの試合を象徴するスパイクミスなどもあり一気に相手に試合を持っていかれました。
豊田合成は、普段に比べMBを効果的に使えていませんでした。第1セットの終盤にMBの被ブロックがあったためなのかその後MBが使えそうな場面でもサイドの選手にセットが上がるケースが見られました。また前述の通り少しでも崩れると2枚以下の攻撃で単調になったこともあり、攻撃の中心のイゴール選手が苦しい体勢でスパイクをするシーンが多かったように思います。コースの打ち分けやブロックアウトを意識的に狙うなど技術のあるイゴール選手ですが、さすがにこの状況では厳しく普段よりブロックにつかまることが多くなりました。
このような苦しい試合の中、光ったのはチームとして戦っていたことでした。サーブではジャンプフローターの近選手、内山選手がコートの真ん中付近を狙い、ダンチ選手がバックセンターの場合はバックアタックの攻撃参加を減らし、フロントレフトの場合は攻撃参加を遅らせるようにしました。パナソニックがMBにサーブを取らせるなどの対策を取らなかったこともあり、ダンチ選手に試合を通してプレッシャーを与え続けたと思います。またバンチ・リードブロックを主体にフロアディフェンスと連動をしたトータルディフェンスを続け、試合後半になるにつれパナソニックの攻撃を捕らえ、シャットアウトやワンタッチでつなぐ場面が増えました。組織的な守備の強みが出たと思います。
5月初旬に黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会が行われ、豊田合成が3冠を目指し出場します。また5月末にはリオオリンピック出場を目指し全日本男子チームが世界最終予選に出場します。オリンピック開催年で間隔が詰まった日程ですが、各選手怪我なく充実したシーズンを過せることを願っております。
文・写真:黒羽白
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