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ゲームレポート

2013-11-07 18:16 追加

世界クラブ選手権女子大会2013観戦記

Others

プールA
ボレロ・チューリッヒ(スイス、開催国代表、2012/13スイスリーグ優勝チーム)
広州恒大(中国、アジア地区代表、アジアクラブ選手権優勝チーム)
ケニア・プリズン(ケニア、アフリカ地区代表、アフリカ選手権優勝チーム)

プールB
ユニリーバ・ヴォレイ(ブラジル、南米地区代表、南米選手権優勝チーム)
アイオワ・アイス(アメリカ、北米地区代表、北米協会推薦チーム)
ワクフバンク・イスタンブール(トルコ、欧州地区代表、CEVチャンピオンズリーグ優勝チーム)
参加チームはいずれもクラブチームであるが、チームの成り立ちは各国における競技環境を反映して千差万別である。以下に各チームとその所属するリーグの概要をかいつまんで紹介する。

1)ボレロ・チューリッヒ
スイスリーグはスイスバレーボール協会によって運営が行われている。ただし、ナショナル・フェデレーションが管轄するのは男女ともNLA(ナショナルリーグA)、NLB(ナショナルリーグB)、L1(リーグ1部)の3つのカテゴリーのみであり、この下に州の協会が管轄し、1Lと入れ替えシステムで連結している2Lというカテゴリーがある。NLAは男女とも10チームが登録し、ホームアンドアウェー方式で2レグを実施、その他レギュラーシーズンと並行してカップ戦が一回行われる。

スイスリーグは外国人枠が存在しないため、NLAでプレーする選手の主力は外国人選手である。このような傾向は強豪クラブにおいて著しく、ボレロも伝統的にセルビア、クロアチア籍の選手を中心としたチーム編成を行っている。今シーズンの登録選手中スイス人選手は2人のみだが、うち1名は名字から察するに東欧からの移民であることが明らかである。

チーム代表のスタブ・ヤコビ氏は40代半ばの熱血漢で、世界中から有力な選手を招聘してチームの強化を図っている。このチームにはかつてはローガン・トムやエステス(旧姓アルタモノワ)なども在籍していたことがあるが、日本人選手では2012/13シーズンに橋本直子選手が、2013/14シーズンには佐野優子選手が在籍している。 2013/14シーズンには前年に引き続いてCEVチャンピオンズリーグに出場する予定であり、キューバやウクライナから優秀なアタッカーを補強して、攻撃力の充実を図っている。

2)広州恒大
広州恒大は、広州と香港を拠点とする不動産開発企業、恒大地産集団が保有するクラブであり、一昨年からは朗平を監督として招聘し、チーム力の充実に努めている。朗平は国際大会の時期には中国代表の監督を務め、国内リーグの時期にはこのチームの指揮を採っている。

このチームは創立が2009年の新興チームであり、元々現役の中国代表選手は多くなかったが、今期このチームに在籍する選手の顔ぶれを見ると、現役の中国代表選手がずらりと揃っている。代表選手を財源の豊かな恒大に集め、国内リーグの期間もナショナルチームの強化に充てようとする中国排球協会指導部の意図が見え隠れする陣容である。かつては広州恒大と天津ブリジストンが中国女子排球リーグにおける2大勢力であったが、今では広州恒大が事実上の中国代表となってしまったため、中国の国内リーグは代表チームの強化練習のような観を呈するに至っている。

3)ケニア・プリズン
経済力に恵まれない国においては軍隊や警察、あるいは政府機関の職員が国を代表するスポーツ選手を雇用している場合が多いが、このチームはケニア刑務所の職員によって編成されており、チーム名に刑務所という名称が明記されている点が何ともユニークである。選手の身分はプロではなく公務員であるため選手は全てケニア人で外国籍選手はいない。

特に身長が高い選手はおらず、ジャンプ力やパワーに優れた選手がいるわけでもない。試合内容も攻撃することに精一杯でシステム的な守備をする余裕などなく、ブロックは概ね一枚でしかもブロック姿勢完成前に打ち込まれることがほとんどである。今はまだ発展途上の初期段階で、バレーの基本技術を学んでいるレベルという印象が強い。

4)ユニリーバ・ヴォレイ
ブラジルスーパーリーガは男女とも10チームが参戦しており、ホームアンドアウェー制によりシーズンを戦い、勝ち点上位チームによるプレーオフで優勝を決定するシステムを採用している。ユニリーバ・ヴォレイはリオ・デ・ジャネイロを本拠とする強豪クラブで、多国籍企業のユニリーバ社がメインスポンサーとなっている。

このクラブはタイーザ、シェイラなどを擁するオサスコとブラジル女子バレーにおける勢力を2分しており、ここ10年近くの間、ブラジルの国内リーグはこの両チームが常に1位と2位を占めてきた。
ブラジルバレーがオリンピック等の国際大会で常勝軍団となった立役者、ベルナルド・レゼンデ氏が2002年から監督を務めており、チームの主力は次世代のブラジル女子を担う素材といわれるガブリエラ・ギマラエス(カビ)である。

5)アイオワ・アイス
アメリカバレーボール協会は2012年PVL(プレミア・バレーボール・リーグ)という組織を立ち上げた。PVLは将来的に男女それぞれ20チームずつのプロチームを育成し、地域レベルと全国レベルにおけるリーグ戦を実施することを目指しているが、現時点では学生や社会人の混成によるチームのみで、登録チームは男子6、女子15にとどまっている。PVLはあくまで、プロチームにおけるリーグ戦を実現するためのプラットフォームとして立ち上げられた組織である。現時点においてプロリーグやプロチームが存在するわけではなく、PVLが主催しているのは年に一回行われる全国レベルのトーナメント戦(全米選手権)のみである。全米選手権はPVLが創設された2012年から女子についてのみ実施されており、2012年には5チーム、2013年には15チームが参加した。2013年春には男子についても選手権を開催する予定である。

女子についてみれば、登録チームの選手には学生が目立つ。アメリカは国内のトップリーグがないため、大学卒業後も選手生活を続けようとした場合、海外のバレーボールチームを渡り歩くことが必要となる。PVLの最大のミッションは大学生選手の発掘とバレーボールで生計を立てようとする選手の受け皿を作ることと思われるが、現時点では有力選手は全て海外のチームでプレーしており、PVLの試みはまだ緒に就いた段階に過ぎない。アイオワ・アイスの選手はアイオワ州立大学出身の選手が多く(監督は現アイオワ州立大学アシスタントコーチ)、チーム構成は我国に於けるつくばユナイテッドに類似するといえるかもしれない。

6)ワクフバンク・イスタンブール
トルコリーグは12チームが参戦するが、多くのクラブが本拠地を経済活動の中心地であるイスタンブールに置いている。このチームは総資産でトルコ第5位のワクフバンクがスポンサーとなっている。2012/13シーズンには木村沙織選手が在籍したためこのチームに詳しい日本人ファンが少なくないだろう。

監督はドイツナショナルチームの監督を兼任するジョバンニ・グイデッティ氏で、コーチ陣の中には全日本コーチを兼任する川北元氏も名を連ねている。このチームは近年CEVチャンピオンズリーグでの優勝を目指して世界中から有力選手を集めており、2013/14シーズンの登録選手にはブラコシェビッチ、ニコリッチ(セルビア)、コスタグランデ(イタリア)、フュルスト(ドイツ)など世界を代表する選手がずらりと名を連ね、近年進境著しいトルコ女子代表選手もその多くがここに在籍している。さしずめ女子バレーのレアル・マドリッドといったところか。このチームの中ではコスタグランデがひと際小さく見えてしまうほどである。

攻撃陣は全員バックアタックを打つことができ、コート中央のみならず両サイドからも前後衛を絡ませた時間差攻撃を行うなど、大型選手が多いにもかかわらず実に多彩で目まぐるしいバレーをする。世界を代表するMBのフュルストを抱えていることや攻撃陣全員がバックアタックを打てるだけあって、センター線を使った攻撃が他のチームと比較して圧倒的に多い。その上、守備においても球際の粘りというか、ボールを落とさないことへの執念が並外れて強いように感じられる。このチームは国内リーグを含めて連勝が50試合以上に及んでいるらしいが、試合後のインタビューでのコメントからも選手たちの連勝へのこだわりが滲み出ている。

このチームはヨーロッパ代表であり、その上ヨーロッパ各国から人気・実力を兼ね備えた選手を集めているだけあって、試合会場では地元チームのボレロ以外ではワクフバンクを応援する観客が圧倒的に多い。トルコから駆け付けたと思われる観戦者も多く、国旗を掲げて盛んに声援を送っていた。
OQF2012-044
 

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