気になるアイツと海外への視野
先程は長いスパンでの目標を聞いたが、今気になる同世代、同ポジションの選手はいるのだろうか。そう聞くと「髙橋健太郎」の名前があがった。

「今シーズンはずっと健太郎が調子いいしプレーもいいのでいい刺激をもらってます。東レとやるときに健太郎に負けたくないという気持ちがあるし、映像をみていてもすごいブロックするし。もともとポテンシャルがあったのは知ってますけど、なかなか試合に出る機会がなくてとか、代表でも控えだったりすることも多くて。でも絶対この人もっとすごいってずっとやってた。ユースの頃から。だから今シーズンの健太郎の活躍を見ると、すげーなと思うし、絶対負けられないと思う。このままだと代表のスタメンだってとられてしまうし、僕の今まで保ってたものも全部奪われると思うので、それはもう危機感をもたせてくれるしすごくいい存在だなと思います」。

同世代の石川祐希を始め、今季は西田有志、髙橋藍、関田誠大らが海外でプレーしている。小野寺自身に海外挑戦の意思はあるのだろうか。答えは「ゼロではない」というものだった。ただし、ミドルブロッカーは今まで日本人が行ってプレーしたことがない。セリエAが日本人ミドルをとってくれるかといえば確証はない。ただ海外でプレーすればいいというわけではないと思うという小野寺は、そこまで日本よりレベルが高くない国でやるくらいなら、国内でやったほうがいいとも思っているようだ。
「例えば戸嵜がインドネシアに行ってますけど、色んな人が海外に挑戦するのはいいこと。バレー界にとっては悪いことじゃない。でも僕個人としてそれが最善なのかはちゃんと考えないと。いざ行って、試合も出れません、リーグはレベルも高くないですっていうワンシーズンを過ごすくらいなら、オリンピックまであと２年しかないし、今年は世界選手権、来年はOQT。なかなか安易に決められないというのがある。そこはちょっと行きづらくさせているところ。でも選択肢にないわけじゃないです」。

プロになってよりバレー人気について考えるようにもなった。FC東京の休部のこともあり、リーグを盛り上げるためにやれることはなんだろうと。

「まず、選手個人のSNSとかは必須。でも、どれだけ新規でバレーを見に来てくれる人を増やすのは、選手の個人的な努力だけではどうにもならない所はある。FC東京さんの件でいえば、コロナ禍があって観客が入れられないし、こういう決断になりましたと。仕方ないところもありますが、あの選手たちをそのまま潰すのはもったいない。バレーボール自体がもっと集客できるようになれば、ああいうことも起こらなかったと思う。人気選手がいるいない関係なしに、『バレーボールの試合会場に行けばこんな楽しいことがある』ということがもっと色んな所から発信できれば、じゃあ今度の休みにはバレーボール見に行ってみようかってことになると思う。それは日本代表だけじゃなくて、リーグでも取り組んでいかないといけない。一選手として思います」。

取材・文：中西美雁
写真：坂本清、黒羽白、小野寺選手お母様提供

プロフィール
小野寺太志（おのでら　たいし）
1996年2月27日　201cm／98kg　宮城県名取市出身　東北高校・東海大学　ポジションはミドルブロッカー
両親ともにバレー選手だが中学生までは野球をして高校からバレーを始めた。ユース、アンダー23などを経てシニア代表に定着。東京五輪出場で29年ぶりベスト８進出に貢献。JTサンダーズ広島に所属し、今季から主将を務める。

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